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SDGs17「パートナーシップで目標を達成しよう」の詳細を事例を交えて紹介!

SDGs

国連によって採択され、2030年までに達成すべき「持続可能な開発目標」を設定して全人類を挙げて取り組むSDGs。
地球環境や社会のシステムを維持するための17の目標と、それに伴う169のターゲットについて、一つずつ事例を交えて解説していきます。

開発途上国への支援を中心に、国家をはじめ産学官すべてのパートナーシップによる目標達成を目指す

「目標17.パートナーシップで目標を達成しよう」は、「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」ことを目的としたものです。
これに付随して、以下のターゲットが設定されています。他の目標に比べ非常にボリュームがありますが、外務省の資料より引用してご紹介します。

●「目標17.パートナーシップで目標を達成しよう」のターゲット

資金
17.1 課税及び徴税能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する。

17.2 先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15〜0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する。

17.3 複数の財源から、開発途上国のための追加的資金源を動員する。

17.4 必要に応じた負債による資金調達、債務救済及び債務再編の促進を目的とした協調的な政策により、開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、重債務貧困国(HIPC)の対外債務への対応により債務リスクを軽減する。

17.5 後発開発途上国のための投資促進枠組みを導入及び実施する。

技術
17.6 科学技術イノベーション(STI)及びこれらへのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上させる。また、国連レベルをはじめとする既存のメカニズム間の調整改善や、全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、相互に合意した条件において知識共有を進める。

17.7 開発途上国に対し、譲許的・特恵的条件などの相互に合意した有利な条件の下で、環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進する。

17.8 2017年までに、後発開発途上国のための技術バンク及び科学技術イノベーション能力構築メカニズムを完全運用させ、情報通信技術(ICT)をはじめとする実現技術の利用を強化する。

能力構築
17.9 すべての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する。

貿易
17.10 ドーハ・ラウンド(DDA)交渉の結果を含めたWTOの下での普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する。

17.11 開発途上国による輸出を大幅に増加させ、特に2020年までに世界の輸出に占める後発開発途上国のシェアを倍増させる。

17.12 後発開発途上国からの輸入に対する特恵的な原産地規則が透明で簡略的かつ市場アクセスの円滑化に寄与するものとなるようにすることを含む世界貿易機関(WTO)の決定に矛盾しない形で、すべての後発開発途上国に対し、永続的な無税・無枠の市場アクセスを適時実施する。

体制面 政策・制度的整合性
17.13 政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進する。

17.14 持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する。

17.15 貧困撲滅と持続可能な開発のための政策の確立・実施にあたっては、各国の政策空間及びリーダーシップを尊重する。

マルチステークホルダー・パートナーシップ
17.16 すべての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する。

17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。

データ、モニタリング、説明責任
17.18 2020年までに、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる。

17.19 2030年までに、持続可能な開発の進捗状況を測るGDP以外の尺度を開発する既存の取組を更に前進させ、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する。

(出典:外務省仮訳「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」)

7項目のターゲットそれぞれに対し、大局的見地から草の根的な活動まで総力を挙げて取り組む

SDGsの最後の目標17は、目標1から16までの持続可能な開発を実現するための手段に焦点を当てています。
ターゲットは項目分けされており、「資金」「技術」「能力構築」「貿易」「体制面/政策・制度的整合性」「マルチステークホルダー・パートナーシップ」「データ、モニタリング、説明責任」の7項目それぞれについて課題が挙げられています。
内容は主に開発途上国への支援が中心となっており、それを牽引する存在と底上げする存在との両輪で、グローバルなパートナーシップを築いていこうとするものです。
では、具体的にどんなパートナーシップがあるのかを見ていきましょう。

1.企業+投資家/環境・社会・企業統治に配慮している企業に対し投資を行う「ESG投資」という手法があり、SDGsの観点からも注目されています。
欧米を中心に伸びを見せていますが、例えば公的年金基金などもESG投資を行っており、今後の重要度も高まる見通しです。

2.企業+企業/同業種または異業種の企業が連携し、技術開発や人材の交流を行うなどの方法は従来から行われてきましたが、SDGsの達成をテーマとした連携が強化されてきています。

3.大学+開発途上国/大学が研究テーマとしてSDGsの目標に取り組み、調査研究対象として開発途上国で実験的な支援を行うケースも多く見られます。

4.行政+NPO法人/行政が事業を行う上で、制度上の制約などから着手できない部分をNPO法人が担うといった連携は一般化しています。
これをSDGsの取り組みとしても応用し、共同で運用するケースも出てきています。
いわゆる産学官連携の取り組みなども、パートナーシップの代表例であり、こうした活動の広がりが目標17の達成に寄与するといえるでしょう。

世界におけるパートナーシップで目標を達成するための取り組み

●大学の取り組み事例/岡山大学

岡山大学は「人類社会の持続的進化のための新たなパラダイム構築」を掲げ、SDGsに積極的に取り組んでいます。
アジアで初めてユネスコチェア(知の交流と共有を通じて、高等教育機関および研究機関の能力向上を目的とするプログラム)の認定を受け、地域や国際社会と共にSDGsの達成を推進しているところです。
このうち目標17に関連する事例の一部をご紹介しましょう。

1.学内で開発途上国の子どもの給食を支援するTFTメニューの提供/TFTとはTABLE FOR TWO Internationalの略で、先進国のメタボリックと開発途上国の飢餓の問題を同時に解決するための運動です。TFTメニューの代金のうち20円が寄付され、アフリカやアジアの子どもへ給食が届けられる仕組みとなっています。同大学でのメニュー提供は、学生が企画し、大学生活協同組合の協力により実現されました。

2.米国務省重要言語奨学金(CLS)プログラムの実施/世界15言語の人材育成を目的に、米国務省が実施している「重要言語奨学金(CLS)プログラム」に参画し、全米から選抜された学生の受け入れを開始。大学での集中講義や、岡山県内の自治体や企業との協働でSDGsをテーマにした課外活動への参加などのプログラムを実施しています。これにより、学生同士の異文化交流をはじめ、企業や団体の米国との関係構築など、将来にわたる効果が期待されています。

このほかにも医学や科学、環境などさまざまな分野でのパートナーシップによる取り組みが進められています。

●企業の取り組み事例/吉本興業

100年以上に渡りエンターテインメントを提供し続ける吉本興業では、SDGsにも企業の特色を生かした取り組みを行っています。
例えば「【よしもと×国連×KDDI】SDGsセミナー」の開催や、「日経SDGsフォーラム×『就活NEXT 未来を変える会社2020年版』特別セミナー」の中での「よしもと×SDGsステージ」出演、アジアを代表する環境総合展示会「エコプロ2019」での「よしもとSDGs花月 in エコプロ2019」の開催など、所属タレントの方々がメッセンジャーの役割を果たしながら、各地でSDGsの啓発活動を推進。
そして、2018年にはバングラデシュのグラミン銀行の総裁ムハマド・ユヌス氏とパートナーシップを結び、新会社「ユヌス・よしもとソーシャルアクション株式会社」を設立しました。
グラミン銀行は、貧困層の女性などに少額の資金を貸し付けるマイクロファイナンスを行う銀行で、創設者のユヌス氏はノーベル平和賞を受賞しています。
この新会社では、吉本興業が展開する「全国47都道府県 あなたの街に【住みます】プロジェクト」という町おこしプロジェクトを軸に、自治体や地元企業、住民と協力して地域の課題を解決する仕組みを作る取り組みを実践。【楽しみながら継続を図る】コンセプトも注目されています。

地球上の誰ひとり取り残さないためのSDGs17の目標

SDGsには17の目標が定められており、そこに具体的な169のターゲットが設定されています。
では17の目標を見てみましょう。

【持続可能な開発目標】

SDGs1.貧困をなくそう
SDGs目標1「貧困をなくそう」は、「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」ことを目的としたものです。

SDGs2.飢餓をゼロに
「目標2.飢餓をゼロに」は、「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」ことを目的としたものです。

SDGs3.すべての人に健康と福祉を
SDGs目標3.「すべての人に健康と福祉を」は、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」ことを目的としたものです。

SDGs4.質の高い教育をみんなに
SDGs目標4.「質の高い教育をみんなに」は、「すべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」ことを目的としたものです。

SDGs5.ジェンダー平等を実現しよう
SDGs目標5.「ジェンダー平等を実現しよう」は、「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」ことを目的としたものです。

SDGs6.安全な水とトイレを世界中に
SDGs目標6.「安全な水とトイレを世界中に」は、「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」ことを目的としたものです。

SDGs7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
SDGs目標7.「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」は、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」ことを目的としたものです。

SDGs8.働きがいも経済成長も
SDGs目標8.「働きがいも 経済成長も」は、「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」ことを目的としたものです。

SDGs9.産業と技術革新の基盤をつくろう
SDGs目標9.「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」ことを目的としたものです。

SDGs10.人や国の不平等をなくそう
SDGs目標10.「人や国の不平等をなくそう」は、「各国内および各国間の不平等を是正する」ことを目的としたものです。

SDGs11.住み続けられるまちづくりを
SDGs目標11.「住み続けられるまちづくりを」は、「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」ことを目的としたものです。

SDGs12.つくる責任 つかう責任
SDGs目標12.「つくる責任 つかう責任」は、「持続可能な生産消費形態を確保する」ことを目的としたものです。

SDGs13.気候変動に具体的な対策を
SDGs目標13.「気候変動に具体的な対策を」は、「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」ことを目的としたものです。

SDGs14.海の豊かさを守ろう
SDGs目標14.「海の豊かさを守ろう」は、「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」ことを目的としたものです。

SDGs15.陸の豊かさも守ろう
SDGs目標15.「陸の豊かさも守ろう」は、「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」ことを目的としたものです。

SDGs16.平和と公正をすべての人に
SDGs目標16.「平和と公正をすべての人に」は、「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」ことを目的としたものです。

SDGs17.パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs目標17.「パートナーシップで目標を達成しよう」は、「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」ことを目的としたものです。

網羅性のある内容が、わかりやすい言葉で示されています。
これらは地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを前提に定められたもの。その背景には、前身であるMDGsが発展途上国の問題の解決にウエイトが置かれており、偏りがあると指摘されていたことがあります。

改めて地球上のすべての人が協力して取り組むべき目標として掲げられたSDGs。
17の目標それぞれの詳しい内容やターゲット、事例については、別の記事で紹介していきます。

ライタープロフィール

神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長

創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。

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