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SDGs15「陸の豊かさも守ろう」の詳細を事例を交えて紹介!

SDGs

国連によって採択され、2030年までに達成すべき「持続可能な開発目標」を設定して全人類を挙げて取り組むSDGs。
地球環境や社会のシステムを維持するための17の目標と、それに伴う169のターゲットについて、一つずつ事例を交えて解説していきます。

森林の回復や保全を中心に、陸の生態系や生物多様性の損失の阻止を目指す

「目標15.陸の豊かさも守ろう」は、「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」ことを目的としたものです。
これに付随して、以下のターゲットが設定されています。外務省の資料より引用してご紹介します。

●「目標15.陸の豊かさも守ろう」のターゲット

15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。

15.2 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。

15.3 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。

15.4 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。

15.5 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。

15.6 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。

15.7 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。

15.8 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。

15.9 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。

15.a 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。

15.b  保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。

15.c 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。

(出典:外務省仮訳「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」)

生態系が本来持っている能力を復活させ、絶滅の危機にある生物の保護などに取り組む

海と同様に、陸の環境保全も重要な課題です。海と陸はお互いに影響しあっており、その両方がともに健全な状態でなければ理想的な環境は実現できません。
目標14でも取り上げられている温室効果ガスの排出は、地上の気温も上昇させます。また、森林破壊は水の循環などに影響を及ぼし、砂漠化の拡大にもつながっています。
このように土地そのものが劣化していくと、動植物の生態系及び生物多様性が危機に瀕する事態をも招くわけです。
生態系とは、ある地域の自然環境とそこに生息する人間を含む生物により構成される空間を指します。太陽エネルギーや大気、水、土、動植物が、光合成や食物連鎖などのさまざまな営みを繰り返し、バランスを保ちながら循環するのがあるべき姿です。
また、生態系を保つうえで、あらゆる生き物がつながり合って生きている生物多様性は欠かせないもの。
生物多様性から受ける恵みは「生態系サービス」と呼ばれ、人間の生活を支えているのです。
にもかかわらず、地球上に175万種いるとされる動植物のうち約26 000種類が絶滅の危機にあるといわれています。
森林破壊では、毎年1 300万ヘクタールの森林が消失しているという状況にあり、それらを食い止めるためにこの目標15が策定されました。

世界における陸の豊かさも守るための取り組み

●企業の取り組み事例/ソニーコンピュータサイエンス研究所

ソニーグループのソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)では、「人類の未来のための研究」を行うと宣言しており、SDGsに関連するさまざまなプロジェクトを立ち上げています。
その中で、この目標15に直接的にアプローチしているのが「協生農法」への取り組みです。
これは生態系が元々備えている自己組織化能力を利用し、従来の農法を変えていくというもの。
種と苗以外を現地に持ち込まず、「無耕起・無施肥・無農薬」を条件に植物の特性を活かした栽培法で作物を生産します。
導入例としては、2015年からアフリカのブルキナファソで実験的に150種の現地の作物を栽培。
それまでは砂漠化が進み、自然回復が不可能とされていた土地でしたが、わずか1年で生態系を蘇らせ、砂漠化の逆転に成功しました。
この成功をもとに、アフリカで協生農法の研究センターが設立されたのをはじめ、世界各地にこのプロジェクトが導入されつつあります。
日本でも2019年に、六本木ヒルズの屋上で協生農法の実証実験が開始されました。
農作物の生産だけでなく、環境や健康までを視野に入れ、生態系の持つポテンシャルを総合的に活用するこの農法への期待は非常に大きいといえるでしょう。

●団体の取り組み事例/more trees

more treesは森林保全活動を行っている一般社団法人です。
音楽家の坂本龍一氏を代表に2007年に設立され、「都市と森をつなぐ」をキーワードとしてさまざまな取り組みを続けてきました。
その代表的なプロジェクトが「more treesの森」の展開です。
2018年の時点で国内15カ所、海外2カ所でそれぞれの地域に適した森づくりを行い、森林が持つ機能の回復を図っています。
日本では国の政策によってスギやヒノキの植林が進められましたが、その結果、この2種類で人工林の70%を占める状況となり、森林の多様性が失われてしまいました。
これを改善すべく、間伐などの必要な手入れを行ったり、その土地に適した樹木を植林するなどで、健全で多様性のある森に整備しています。
また、開発途上国においては主に植林を行っていますが、在来種に加えて果樹を植え、将来的に果樹を収穫して現地の収入にすることを目指すほか、防火帯や貯水池などのインフラ整備も実施しているとのこと。
さらに、需要の低下などから価格下落に陥り、衰退している国内の林業のために国産材を使用したオリジナルプロダクトの企画・製造・販売を手がけたり、イベントやワークショップ、シンポジウムなどで広報や啓発活動にも取り組んでいます。

●企業の取り組み事例/大建工業

日本最大級の建築資材の総合企業として知られる大建工業。
同社は、1945年の創業当時から一貫してアップサイクルを行っている企業です。
創業当時から主力の合板事業は基本的に木材を有効活用して作られており、製材端材や廃材をウッドチップ化し再利用し製品化する、アップサイクルの先進企業です。

▼参照:DAIKEN魂!
未利用資源を有効活用! 創業時からアップサイクルや社会課題解決に取り組む大建工業

地球上の誰ひとり取り残さないためのSDGs17の目標

SDGsには17の目標が定められており、そこに具体的な169のターゲットが設定されています。
では17の目標を見てみましょう。

【持続可能な開発目標】

SDGs1.貧困をなくそう
SDGs目標1「貧困をなくそう」は、「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」ことを目的としたものです。

SDGs2.飢餓をゼロに
「目標2.飢餓をゼロに」は、「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」ことを目的としたものです。

SDGs3.すべての人に健康と福祉を
SDGs目標3.「すべての人に健康と福祉を」は、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」ことを目的としたものです。

SDGs4.質の高い教育をみんなに
SDGs目標4.「質の高い教育をみんなに」は、「すべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」ことを目的としたものです。

SDGs5.ジェンダー平等を実現しよう
SDGs目標5.「ジェンダー平等を実現しよう」は、「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」ことを目的としたものです。

SDGs6.安全な水とトイレを世界中に
SDGs目標6.「安全な水とトイレを世界中に」は、「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」ことを目的としたものです。

SDGs7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
SDGs目標7.「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」は、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」ことを目的としたものです。

SDGs8.働きがいも経済成長も
SDGs目標8.「働きがいも 経済成長も」は、「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」ことを目的としたものです。

SDGs9.産業と技術革新の基盤をつくろう
SDGs目標9.「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」ことを目的としたものです。

SDGs10.人や国の不平等をなくそう
SDGs目標10.「人や国の不平等をなくそう」は、「各国内および各国間の不平等を是正する」ことを目的としたものです。

SDGs11.住み続けられるまちづくりを
SDGs目標11.「住み続けられるまちづくりを」は、「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」ことを目的としたものです。

SDGs12.つくる責任 つかう責任
SDGs目標12.「つくる責任 つかう責任」は、「持続可能な生産消費形態を確保する」ことを目的としたものです。

SDGs13.気候変動に具体的な対策を
SDGs目標13.「気候変動に具体的な対策を」は、「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」ことを目的としたものです。

SDGs14.海の豊かさを守ろう
SDGs目標14.「海の豊かさを守ろう」は、「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」ことを目的としたものです。

SDGs15.陸の豊かさも守ろう
SDGs目標15.「陸の豊かさも守ろう」は、「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」ことを目的としたものです。

SDGs16.平和と公正をすべての人に
SDGs目標16.「平和と公正をすべての人に」は、「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」ことを目的としたものです。

SDGs17.パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs目標17.「パートナーシップで目標を達成しよう」は、「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」ことを目的としたものです。

網羅性のある内容が、わかりやすい言葉で示されています。
これらは地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを前提に定められたもの。その背景には、前身であるMDGsが発展途上国の問題の解決にウエイトが置かれており、偏りがあると指摘されていたことがあります。

改めて地球上のすべての人が協力して取り組むべき目標として掲げられたSDGs。
17の目標それぞれの詳しい内容やターゲット、事例については、別の記事で紹介していきます。

ライタープロフィール

神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長

創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。

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