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ビジョンとは事業の行く末の可視化する事 企業理念体系概説

ブランディング

2010年代頃から、ビジネスの世界では”VUCAの時代”という言葉がよく使われるようになりました。VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの頭文字をつなげたもので、先行き不透明で予測が困難な社会のことを表しています。

VUCAの時代に不可欠な理念

2020年以降は世界的な感染症拡大の波を受けて、これまで想定しなかったさらなる環境の変化が生じました。こうした環境の変化は企業にとって脅威でもあり、また機会でもあります。何をもって自らの使命と任じ、どんな価値を社会に提供して成長を続けていくのか。VUCAの時代にあっては、理念の要素をしっかり設定・表明・検証する企業が、その存在価値を認められます。

その意味で、企業にとって理念は非常に大切なバックボーンであり、経営資源です。しかしビジネスの現場に生きる企業が用いる概念としてはいささか観念的・抽象的であるためか、用語や定義が諸説混在しており、分かりにくい側面もあります。
そこで「RHCブランディングnote」では、企業理念体系概説シリーズとして代表的な理念的要素であるミッションやビジョン、バリューなどをはじめとする企業の理念について、継続して解説していこうと思います。
第一回目のこの記事では「ビジョン」についてお話します。
ただし、ミッション、ビジョン、バリューの3要素はセットで語られることが多いため、まずこの3者の関係性を簡単に説明しましょう。

実現したい未来の像を示す「ビジョン」

ミッション(Mission)、ビジョン(Vision)、バリュー(Values)は、企業の理念体系を説明する際によく用いられる3つの要素です。この3要素をセットにし、それぞれの頭文字をとって”MVV”と称することもあります。マネジメント論でわが国でも知られる経営学者ピーター.F.ドラッカーが、2003年に著した「Managing in the Next Society」※の中で体系的に提唱したことで知られています。
※邦訳は2002年5月に日本先行発売された「ネクスト・ソサエティ」(ダイヤモンド社)。

まずミッションは、企業が「何を使命として、何のために自分たちは存在するのか」を明確化する、非常に重要な概念です。ミッションは原則として、VUCAの時代にあってもゆるぎのない、変わらぬ重さをもって企業の理念体系の中核を成します。このミッションを追求し続けるために、企業は未来に向けてビジョンを掲げ、社会に提供していくバリューを充実させていくのです。そのためミッションはやや観念的で抽象度の高い概念になることが多く、実際のビジネスで提供していくバリューは現実に即したものとなります。ビジョンはその中間に位置し、ミッション実現に至る当面の目標値として、現在より先の時系列に掲げられます。具体的な経営計画の中で例えば「中期経営ビジョン」のように実現の時期と共に示す場合もあります。

<参考リンク>
コーポレートブランディングと企業理念・概略編 (rhcnet.com)

ビジョンをどう作るのか

ドラッカーによれば、MVVは企業のアイデンティティそのものであり、その設定は当事者にしかできないものとされています。より具体的なレベルの戦略は外部機関でも立案や実施が代行可能ですが、それはMVVが確立されているからこそ可能なのです。
繰り返しになりますが、企業理念やMVVという用語は固定された定義があるわけではないため、論者や企業によって意味する内容が少しずつ違う場合があります。あまり厳密にこだわる必要はありません。自社にとっての理念やMVVをどう位置づけるのか、しっかり定義することが大切です。
基本的には、ビジョンはミッションを実現するうえで、当面のゴールとして示す目標です。またバリューは、ビジョン実現のために活用するフォースであったり、社会に対して提供する独自の価値です。卵と鶏の比喩にも似て、MVVの3つはどれが先なのか、が企業によって異なります。そこでビジョンを策定する際も、他の2つをしっかり確認しながら明確化するプロセスが採られます。

<参考リンク>
コーポレートアイデンティティとは ブランディングの効果を最大化しよう (rhcnet.com)

ところでVISIONという語はどこからきているのでしょうか。一義的には「視覚」という意味の英単語です。これがビジネスに取り入れられ「先の見通し」「先見性」「視野」というニュアンスを強く持つ言葉になったのです。すなわちビジョンは「事業の行く末を映像で可視化したビジュアルイメージ」ということになります。
企業理念としてはビジョンは言葉で表されますが、本来的には掲げたミッションをバリューによって実現していくことで形成される、企業と社会の未来像なのです。
この未来像を社内で共有するために、例えばSWOT(強み:Strength、弱み:Weakness、機会:Opportunity、脅威:Threat)分析や4P(Product、Price、Place、Promotion)4C(Custmer Value、Custmer Cost、Convenience、Communication)などの分析ツールを用いて商品・サービスの在り方や対象社会との関係性を明確にします。もちろん必ずしも分析ツールを使う必要はなく、大切なのは自分たちのビジネスについて経営陣と当事者がとことん考え抜くことです。
その結果を受け、未来に向かう時系列のどのタイミングで、どのようなビジュアルイメージで自分たちの事業を想定するか、を言語化していきます。これが「ビジョン」のもととなります。
最終的には、これをもとに他の理念要素(ミッション、バリュー、スローガン、スピリットなど)と整合性をとりながら表現をブラッシュアップし、理念体系として整備します。

言葉にすると簡単ですが、ビジョンをはじめとする理念系の作りこみプロセスは企業によりすべて異なります。このプロセスは原則として企業自身の手で行うべきものですが、スムーズに進めるためのサポートを受けたり、第三者からの客観的な視点を取り入れるために、外部の支援機関が役立ちます。
私たちリボンハーツクリエイティブでは、ビジョン立案を含め総合的な視点で企業のwebブランディング支援を行っています。MVVや企業理念、ブランディングについてご質問・ご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

リボンハーツクリエイティブ株式会社 (rhcnet.com)

ライタープロフィール

神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長

創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。

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