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分かったようで分からない、企業文化って何だろう?

ブランディング

企業文化とは?

「企業文化:Corporate Culture」という言葉は、よく耳にするものの少しわかりにくい概念です。
一言で言うならば「組織や集団が共有している、それぞれに独自・固有の思考形態や行動様式」と定義することができます。しかし社風や企業風土、企業体質などとどう違うのか、と問われると混乱してしまいますよね。この記事では、そうした「企業文化」について解説し、ブランディングの関係性について述べていきます。

企業文化を構成する要素

企業文化という言葉があいまいさを伴うのは、語中に「文化=Culture」というワードが含まれるからです。室町文化、南アメリカ文化などというときには、その時代や地域に特有の建築や絵画などの芸術活動、あるいは生活様式などの「史観的」なニュアンスを感じます。それが「企業=Corporate」という言葉と結びつくと、その企業を構成する人々の集合的な思想、集団として醸し出す雰囲気といった感が強くなります。
例えば「HONDA文化」「SONY文化」「Apple文化」というように特定の企業名を冠してみると「ああ、そういう感じ」と理解がしやすいのではないでしょうか。
HONDAやSONYのように強力な個性を持つ企業には「HONDAらしさ」「SONYらしさ」というある種の基準があります。この「らしさ」こそ企業文化の正体です。
その企業らしさ=企業としてのあるべき姿、は体系的な理念の形で明文化されているものもあれば、暗黙の了解として社内に漂っている場合もあります。文化というからには一朝一夕にできあがるものではありませんが、多くの場合創業者や草創期のエピソードが大きく影響しています。なぜなら、事業を始めようとするタイミングでは「なぜそれを始めるのか」「何のために、どんな価値を提供するのか」というビジョンやバリュー、ミッションなどの理念が、強い意思と共に掲げられるからです。そして市場で勝ち残り成長していくために、企業としての方針やSWOT(強み・弱み、機会・脅威)の要素などが構成員に伝播、共有されていきます。
この過程で形成されていく理念体系や行動様式、コミュニケーションスタイル、制度、労働環境などのすべてが、企業文化を構成する要素となるのです。
また年を経て企業活動が積み重ねられると、そこに企業を取り巻くヒストリー、ストーリー、エピソードといったものが付加され、これらもまた企業文化の形成要素となります。
企業文化はそうした過去の活動が集積した結果できあがるものであり、なおかつ今後の活動次第で変化していくものでもあります。
次章では、その分かりやすい事例としてパタゴニアの企業文化について述べてみましょう。

企業文化がよくわかる事例

Patagonia:パタゴニア社は、1965年にアメリカ・カリフォルニア州で創業されました。創業者のイヴォン・シュイナードが著した「let my people go surfing(社員をサーフィンに行かせよう)」という本があるのですが、これを見るとパタゴニアの企業文化がよく分かります。ちなみに、同書は強制されなくとも社員なら一度は目を通すことで知られています。

シュイナードは「いい波が来てるから今サーフィンに行きたい」という社員がもしいたなら、迷うことなく行かせてやれ、と言うのです。自分で仕事をコントロールする責任感。仕事に好影響を与えることで得られる効率性。予期せぬ事態に対処できるフレキシブルな態勢づくり。周囲がサポートし補完しあう協調性。商品やサービスと直結するアスリートとしての見識・意識。
社員を快くサーフィンに送り出すことでこれらすべてが担保され、またこうした文化が根付かなければ社員は仕事中サーフィンに行くことができない、というわけです。シュイナードのこの思想は現在パタゴニアという企業に十分定着しているといいます。
末端のアルバイトに至るまで、自由な雰囲気の中でそれぞれが協力しつつ責任を果たすスタイルは、商品やサービスの面にも表れています。同社はサプライチェーン全体を通じて自然環境に負荷をかけない製品づくりを志向し、1970年代から劣悪な労働環境を排除、公正な雇用と取引を掲げました。
そして2019年、パタゴニアはミッションステートメントとして「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」を制定しました。当初は明文化された企業理念がなく暗黙のルールとして形成されていたパタゴニアの企業文化は、何度かの改訂を経てついに壮大なものとなりました。
2021(令和3)年10月31日に行われた第49回衆議院選挙では、よりよい社会を作るためにみんなで(社員もお客さまも)投票に行こう、と全店舗で休業を決めるなど、パタゴニアの行動は現在も加速しています。こうした企業の態度は人々の印象に強く残り、そこで働く人や利用する顧客、共にかかわる協力会社や株主などあらゆるステークホルダーに強烈なイメージを形成させるのです。
その結果として社内に築かれるものが企業文化であり、すべての人々個々の脳裏に浮かび上がる企業像が、その企業のブランドなのです。

参考リンク
社会的責任 | パタゴニア | Patagonia

私たちにとって大切な何かとともに生きるために 、投票しましょう。 | クリーネストライン | パタゴニア | Patagonia |

ライタープロフィール

神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長

創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。

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