オウンドメディアとは、目的や作り方、成功事例10選を紹介
コンテンツマーケティング
オウンドメディアという言葉を聞いたことがあるものの、正直よく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事ではオウンドメディアの意味や種類、構築するメリットなどを分かりやすく解説していきます。
オウンドメディアの立ち上げの流れや成功事例などもご紹介していますので、ぜひ最後までご確認ください。
オウンドメディアとは
オウンドメディアとは、所有を意味する「Owned」という言葉のとおり、企業や組織が保有・運営しているメディアを指します。
身近なところで言えば、コーポレートサイトやブログなどがオウンドメディアの代表格として挙げられるでしょう。
オウンドメディアは企業プロフィールや事業内容といった情報をはじめ、製品・サービスに関連するお役立ち情報や採用情報などを提供し、企業への理解を促進する役割を担います。
昨今、顧客が必要とする情報は多岐に渡り、コーポレートサイトだけでは顧客の情報ニーズに対応しきれないケースが増えてきました。
そういった状況の中で、多くの企業は顧客の多様な情報ニーズに応えていくために、ブログや採用サイトといった様々なオウンドメディアを構築しているのです。
広義ではパンフレットや広報誌などもオウンドメディアに含まれますが、大抵の場合は自社で運営しているWEBサイトのことを指す点は留意しておきましょう。
オウンドメディアの種類
オウンドメディアと一口に言っても、様々な種類が挙げられます。
ここではオウンドメディアの代表的な種類を確認していきましょう。
種類①:コーポレートサイト
オウンドメディアの種類として、まずご紹介するのはコーポレートサイトです。
コーポレートサイトは、企業ホームページや公式サイトとも呼び、大多数の企業や組織が保有しているオウンドメディアの代表格です。
コーポレートサイトは、企業に関する基本的な情報を提供する役割を担っており、所在地や従業員数、事業内容といったプロフィールなどを記載します。
種類②:ブログ
ブログもオウンドメディアとして挙げられます。
ブログは自社の製品・サービスに関連して、顧客にとって役立つ情報を記事として提供していくオウンドメディアです。
コーポレートサイトは、自社のことを既に認知している顧客の流入がメインとなりますが、ブログはまだ自社のことを知らない未認知顧客からの流入も期待できます。
種類③:ブランドサイト
次に挙げられるのはブランドサイトです。
ブランドサイトは、企業の創業理念や価値観、掲げているビジョンなどの情報を伝えていくオウンドメディアとなります。
コーポレートサイトの中にブランドページを設けているケースもありますが、ブランドへの理解促進のため別途ブランドサイトを構築している企業も見られるのです。
種類④:採用サイト
採用サイトもオウンドメディアの一つです。
採用サイトは、求職者に向けて採用に関する情報をまとめて提供するオウンドメディアのことを指します。
求人情報だけでなく、「従業員が仕事に取り組むときに大事にしているポイント」や「従業員の1日のスケジュール」といったコンテンツも提供でき、求職者の企業理解を促す役割を担っています。
種類⑤:ECサイト
続いて挙げられるのはECサイトです。
ECサイトは自社製品をWeb上で販売するためのオウンドメディアとなります。
BtoCビジネスを展開している企業の中には、先のブログとECサイトを組み合わせたオウンドメディアを運営している事例も多く見られます。
オウンドメディア・ペイドメディア・アーンドメディアの違いは?
オウンドメディアはトリプルメディアを構成する要素の一つであり、他の要素としてペイドメディアとアーンドメディアがあります。それぞれ簡単に確認しておきましょう。
ペイドメディア
ペイドメディアとは、WEB広告を出稿するメディアを指します。
厳密にはWEB広告枠を設けているメディア自体を指す言葉ですが、WEB広告そのものを指してペイドメディアと言うパターンもあります。
顧客に自社を理解してもらう役割を担うオウンドメディアに対して、ペイドメディアは理解促進の前段階である認知獲得の役割を持つメディアと言えるでしょう。
アーンドメディア
アーンドメディアとは、SNSなどのメディアを指す言葉です。
顧客や消費者同士が交流を図るメディアであるため、自社で内容をコントロールしにくいという難点があるものの、口コミを分析したり、情報を拡散したりする上で重宝するメディアとなります。
その他、顧客との双方向的なコミュニケーションを実施できるなど幅広い用途に使えますが、炎上などによる企業イメージの低下を招いてしまうリスクもある点は注意が必要です。
なぜオウンドメディアが企業に注目されているのか
ここまでオウンドメディアの概要について解説してきましたが、ここからはなぜオウンドメディアが注目されているのかについて確認していきましょう。
理由①:WEB広告の限界
注目されている理由の一つ目に挙げられるのは、WEB広告の価値が下がったきたという点です。
インターネットやSNSが発展した今、顧客は自ら必要な情報を集めることができます。
そういった状況の中で、企業からの一方的なプロモーションであるWEB広告に対して、ネガティブな反応を示す顧客も出てきたのです。
その一方で、必要な情報を必要なタイミングで提供してくれる企業に対しては、顧客も良いイメージを抱くようになったと言えます。
そのためマーケティングにおいて、顧客の情報ニーズに応える役割を持つオウンドメディアの価値が相対的に高まり、数多くの企業が注目しているのです。
理由②:SNSの限界
SNSだけでは顧客の情報ニーズに応えきれないという点も、オウンドメディアが注目される理由となっています。
SNSはユーザーとコミュニケーションを図ることができ、また情報の拡散力も他メディアよりも優れているという利点がありますが、新しい投稿の度に過去の投稿は埋もれてしまいます。
またFacebookを除いて基本的に投稿できる情報量は少ないため、企業理解を促進するにはSNSだけでは不十分なのです。
その点、オウンドメディアでは古い情報でも比較的アクセスしやすく、さらに情報量も自社の好きなように調整できます。
そのため企業理解を促進する上で、オウンドメディア活用の重要性が再認識され、注目を集めていると言えるでしょう。
注目されているBtoBオウンドメディアや採用オウンドメディアとは
続いてオウンドメディアの中でも、特に注目されている活用領域についてご紹介します。
注目のオウンドメディア①:BtoBオウンドメディア
昨今、BtoB事業を展開する企業もオウンドメディア運用に注目しています。
BtoBはBtoCよりも購買検討期間が長い傾向にある上、購買意思決定に関わる人数も多くなるという特徴があります。その分BtoCよりも購買検討に必要な情報量も多くなるのです。
こういった多くの情報ニーズに対応するために、BtoBオウンドメディアを構築し、購買検討や決裁手続きに役立つ情報を提供する企業も増えているのでしょう。
注目のオウンドメディア②:採用オウンドメディア
また採用専門のオウンドメディア(採用サイト)を立ち上げる例も増えています。
就職は人生における重要なイベントであるため、求職者は企業に関する情報をより多く求めています。
また多様な働き方が当たり前となった今、業務内容や年収といった情報だけでなく、「どういった働き方を実現できるのか、どういう価値観が重視されているのか」といった情報も求められるようになったのです。
コーポレートサイトの採用ページだけでは、そういった情報ニーズに十分に応えることは難しく、別サイトとして採用オウンドメディアを立ち上げる企業も増加していると言えるでしょう。
オウンドメディアのメリット
ここでオウンドメディアのメリットについて、改めて押さえておきましょう。
メリット①:広告費の適正化が実現できる
オウンドメディアのメリットとして、まず挙げられるのは広告費の適正化が実現できるという点です。
オウンドメディアを構築せず、集客をWEB広告に依存している場合、広告費が高額となってしまう可能性が高いと言えます。
しかしオウンドメディアを構築・運用することで、徐々にオウンドメディア経由で集客できるようになり、販売促進などの効果も期待できるようになります。
その結果、WEB広告への依存度を下げることができ、広告費の削減や適正化を実現できるでしょう。
メリット②:ブランディングに最適
次に挙げられるメリットは、ブランディングに最適であるという点です。
ブランディングは企業の理念や価値観をブランドとしてまとめ、そのブランドを従業員や顧客に正しく伝えていく一連の活動を指します。
先にご紹介したブランドサイトなど、ブランドの理解促進に特化したオウンドメディアを構築することで、ブランディングを効果的かつ効率的に推進できるでしょう。
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メリット③ :顧客ロイヤルティを高められる
顧客ロイヤルティ(企業や製品・サービスへの愛着度)を高められる点もメリットと言えます。
オウンドメディアを運用することで、顧客の様々な情報ニーズに的確に応えていくことができ、結果として顧客ロイヤルティを高めていくことが可能です。
顧客ロイヤルティが高まれば、継続利用やポジティブな口コミの拡散も期待できるため、マーケティングの成果も安定したものになるでしょう。
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オウンドメディアに重要なSEO
オウンドメディアには先に挙げたようなメリットがあるものの、運用において注意すべき点があります。
それはSEOに取り組む必要があるという点です。
SEO(Search Engine Optimization/検索エンジン最適化)とは、Googleなどの検索エンジンで検索された際に、上位表示を狙うために行う施策のことを指します。
例えば自社がWEBサイト制作事業を行っている場合、「WEBサイト 外注」などの検索キーワードでの上位表示を狙うといった形になるでしょう。
オウンドメディアで集客するためには、このSEOが肝となります。
自社の製品・サービスに関連するキーワードへ対策を行うことで、はじめて検索エンジン経由での安定した集客を実現できるのです。
とはいえWEBサイトのドメインなどによって、SEO効果が出るまでに時間がかかるケースがあるため、その間はWEB広告やSNSを併用し、別軸での流入を図る必要があるでしょう。
どのようにしてオウンドメディアを立ち上げるのか
ここからはオウンドメディアの作り方について、6つのステップに分けて確認していきます。
1.オウンドメディアの目的・KPIを設定する
一つ目のステップは目的とKPIの設定です。
オウンドメディアには様々な種類がありますが、目的によって構築すべきオウンドメディアは異なります。
例えば集客効果を高めたい場合はブログ、ブランディングに力を入れたい場合はブランドサイトを構築すべきと言えるでしょう。
そのため、最初に「何のためにオウンドメディアを構築するのか」を明確にする必要があるのです。
また目的を定めた後は、その目的を基にKPI(重要業績評価指標)を設けましょう。
例えば「集客」を目的とした場合、以下のようなKPIが考えられます。
【集客におけるKPIの例】
1.特定キーワードでの表示順位
2.特定キーワードでの検索流入数
3.ブログ記事ページのPV数
4.ブログ記事ページの滞在時間
5.ブログ記事の新着配信登録
ここで定めた目的とKPIを基に、後ほど実施するコンテンツ制作などに取り組むことになります。
2.オウンドメディアのペルソナ・ターゲットの設定方法
目的とKPIを定めた後は、ターゲットを設定していきます。
ターゲット設定においては、詳細な人物像であるペルソナを策定することが重要になります。
ペルソナを策定する際は、以下のような項目を具体化することで人物像を肉付けしていくことになるでしょう。
【ペルソナの主な項目】
1.年齢
2.性別
3.家族構成
4.居住エリア
5.職業
6.趣味・嗜好
7.価値観
8.情報収集に用いるデバイス
9.情報収集を行う時間帯
10.よく見るテレビや雑誌
11.活用しているSNS
BtoBの場合は、これらに加えて企業規模や担当者の役職、事業上の課題などを追記しておく形になります。
またペルソナを策定した後は、カスタマージャーニーを併せて制作しておくことをおすすめします。
カスタマージャーニーとは、購買検討段階(ex. 認知⇒興味関心⇒比較検討⇒購買⇒リピート)ごとに、ペルソナの悩みや課題、提供すべき情報やコンテンツをまとめたものです。
ペルソナとカスタマージャーニーを制作しておくことで、一貫性のあるオウンドメディア運用を実現できるでしょう。
3.オウンドメディアの運用体制
次にオウンドメディアの運用体制を構築します。
オウンドメディアの運用は長期的な取り組みとなるため、継続運用に耐えうる体制を構築することが求められます。
運用体制において必要な役割としては、主に以下のようなものが挙げられるでしょう。
【オウンドメディア運用における主な役割】
1.ディレクター:オウンドメディア全体を統括し、マネジメントする役割を担う
2.コンテンツクリエイター:オウンドメディア上に投稿するコンテンツを制作する
3.メディア運用担当者:コンテンツ投稿や顧客コメントへの対応などを実施する
4.分析担当者:コンテンツの効果測定や各KPIのモニタリングを行う
これらの役割を持つ人員を配置することで、オウンドメディア運用を安定して継続できます。
4.オウンドメディアのエディトリアルカレンダー
運用体制が構築できた後は、エディトリアルカレンダーを制作します。
エディトリアルカレンダーとは、コンテンツ配信のスケジュールをまとめたカレンダーのことです。
ただ単にコンテンツ配信の順番をまとめるだけでなく、季節や時期などに応じて自社製品・サービスと関連したイベントなども書き込んでおくことで、コンテンツ配信のタイミングを最適化できるでしょう。
エディトリアルカレンダーを運用チーム内で共有し、各コンテンツクリエイターの業務配分や効果測定のタイミングなどをマネジメントしていくことになります。
5.オウンドメディア構築とコンテンツ作成
続いてオウンドメディアの構築とコンテンツ作成に入ります。
既存のWEBサイトを利用する場合を除き、オウンドメディア自体も新たに構築する必要があるでしょう。
ページ数や階層といった構成、機能などの要件を定義した上で、制作していくことになります。
自社にWEBサイト制作機能がない場合は、外部制作会社に委託する必要があるでしょう。
またオウンドメディア構築と並行して、配信用のコンテンツ作成も進めていきます。
コンテンツ作成については、先のステップで用意したカスタマージャーニーやエディトリアルカレンダーを参照しながら、進めていくと良いでしょう。
コンテンツ作成についても、社内にノウハウがない場合は外部委託することをおすすめします。
6.オウンドメディアのコンテンツの拡散
オウンドメディアがオープンした後は、コンテンツの投稿や拡散を行います。
拡散のベースとなるのはSEOによる検索流入になりますが、SEOが効果を発揮するまでにはある程度の時間がかかるため、検索連動型広告をはじめとしたWEB広告やSNS運用に取り組み、拡散経路を確保しましょう。
特にX(旧Twitter)やInstagramはSNSの中でも拡散力に優れているため、上手く活用することでスピーディにコンテンツ拡散を狙うことができます。
またコンテンツ拡散の取り組みと並行して、効果検証と改善を実施することも求められるでしょう。
設定しているKPIなどを基準に効果を検証しつつ、必要に応じてコンテンツを改善したり、追加したりといった対応を実施していくことになります。
オウンドメディアを運用代行するメリット
オウンドメディアの立ち上げから運用までの流れを簡単に確認してきましたが、ここまで読まれた方の中には、「正直自社だけで対応するのは難しい……」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった方にはオウンドメディアの運用代行をおすすめします。
オウンドメディア運用を代行してもらうメリットとしては以下のような点が挙げられます。
●工数をかけずにオウンドメディアを運用でき、他の業務にリソースを割ける
●専門的なスキルを持ったプロフェッショナルが運用するため、効果が出やすい
ただし運用代行サービスを利用するにあたって費用が発生するため、その点は理解しておく必要があるでしょう。
オウンドメディアの成功事例10選
【事例1】大建工業 リフォームマガジン
https://www.daiken.jp/reform/magazine/index.html
様々な建材を提供する大建工業の運営するオウンドメディア「リフォームマガジン」。
リフォーム需要のあるユーザーに建材会社としてリフォーム情報を発信するためのオウンドメディアです。
リフォーム市場での建材会社の立ち位置はBtoBtoCです。基本的に工務店がユーザーと接するため、大建工業とユーザーの接点はありません。そこでオウンドメディア「リフォームマガジン」を活用し、リフォーム需要のあるユーザーとの接点を創出することに成功しています。
【事例2】カンロ Sweeten the Future
https://www.kanro.co.jp/sweeten/
製菓会社のカンロが運営するオウンドメディア「Sweeten the Future」。
“糖で生活を健やかに”をコンセプトに、あまいもの好きの方にさまざまなスイーツ情報を提供しています。製菓業界は基本的にBtoBtoCとなり、ユーザーと製菓会社との直接的な接点はありません。そこでオウンドメディア「Sweeten the Future」を活用し、多数のユーザーに旬なスイーツ情報をお届けしています。
【事例3】ユピテル ユピスタ
https://www.yupiteru.co.jp/yupista/
ドライブレコーダーの老舗のユピテルが運営するオウンドメディア「ユピスタ」。
ドライブレコーダーを開発・販売するユピテルは、静岡にユピテル静岡研究所を持ち、新規事業の研究開発に力を入れています。IT・IoT・ICT・AI・VR・ARをテーマに未来のユピテルを表現するためのオウンドメディアが「ユピスタ」です。
【事例4】日本特殊陶業 MIRAInoME
https://mirainome.co.jp/
自動車のスパークプラグを提供する日本特殊陶業が運用するオウンドメディア「MIRAInoME」。
まとめ
今回はオウンドメディアをテーマに、意味や注目されている理由、立ち上げの流れなどをまとめて解説してきましたが、いかがでしたか。
現在は「広告や営業担当者からのアプローチを待つ受動的な顧客行動」ではなく、「インターネットやSNSを活用して、自ら必要な情報を集める能動的な顧客行動」が主流となっています。
そういった状況において、多様な情報ニーズに応えるオウンドメディアは、マーケティング活動の中でも大きな役割を果たすことになります。
構築・運用には工数や費用がかかるものの、適切にオウンドメディアを運用できれば、集客から購買促進といった成果に繋げることができるでしょう。
ぜひこの記事を参考に、オウンドメディアの構築や運用に取り組んでいただければ幸いです。
ライタープロフィール
神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長
創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。