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細田悦弘の企業ブランディング 〈第27回〉 セレンディピティを引き寄せる!サステナビリティ・マインド

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「偶然気づいた」「ふと思いついた」「パッとひらめいた」によって、社会課題の解決につながるビジネスがしばしば誕生しています。この現象を『セレンディピティ』といいます。この偶然をとらえて幸運に変える力を養いたければ、サステナビリティ・マインドが威力を発揮します。

セレンディピティとは

社会の価値観がサステナビリティ重視に移り行く中で、現代企業は社内外の共感と支持を獲得するために、「社会における存在意義(パーパス)」が強く問われるようになりました。そこで、「事業による社会課題解決」に注目が集まっています。ところが、その切り口やアプローチの仕方に戸惑っている企業が散見されます。一方で、コロンブスの卵のようにブレークスルーできた成功事例も目立ちます。そこには、しばしば「偶然気づいた」「ふと思いついた」「パッとひらめいた」という言葉が聞かれます。これは単なる偶然で舞い込んだ幸運ではなく、『セレンディピティ』という現象ととらえることができます。
セレンディピティ(Serendipity)とは、単なる偶然に舞い込んだ幸運を意味するのではなく、「偶然をとらえて幸運に変える力」といえます。

☆「セレンディピティ(Serendipity)」の語源・由来
18世紀のイギリスの作家ホレス・ウォルポールが、友人に宛てた手紙の中で使った造語と言われている。おとぎ話『セレンディップの3人の王子(The Three Princes of Serendip)』に因(ちな)んだ言葉である。セレンディピティの語源となる「セレンディップ(Serendip)」とは、アラビア語でセイロン(現スリランカ民主社会主義共和国)のこと。この本は、主人公の3人の王子が旅の中でいろいろな出来事に遭い、目の前にある問題や物事に真剣に取り組む勇気や知恵によって、自分たちの目的を果たすという物語。

セレンディピティを引き寄せる!サステナビリティ・マインド

ビジネスで社会課題解決に挑む際に、セレンディピティの恩恵を得たければ、土台として「サステナビリティ・マインド」が威力を発揮します。サステナビリティ・マインドとは、サステナビリティ的モノの見方、考え方です。
『マインド』の代表例として、法学の世界を引用します。法律を学ぶ際に、「リーガルマインド(法的思考力)」を養うことは大変意義深いことです。これを身につけることにより、数多(あまた)ある法律や条文に翻弄されることなく、物事の正義や公平の感覚を身につけ、その法律が実現しようとしている価値に基づいて筋道を立てて考え、妥当な結論を導くことができるようになります。

同様に、ともするとサステナビリティ推進に際して、個々のテーマ毎に無味乾燥に機械的に取り組み、やらされ感や横並び感が生じてしまいがちですが、「サステナビリティ・マインド」を備えることによって、その背景にある本質的な意味や意義を理解し、セレンディピティを引き寄せる原動力となります。単なる偶然で舞い込む幸運を期待するのではなく、サステナビリティにまつわる知識や、観察力、洞察力を潜在的に持っていることが前提となります。

アイデアは無からは生まれにくいものです。時代が求めるビジネスの着想は、サステナビリティに関する知見やリテラシーを蓄えおくことによってインスパイアされるようです。サステナビリティ・マインドが、自らが取り組むべき社会課題に対する『レセプター(受信機)』になり、ひらめきや気づきにつながります。『周辺視野』としてぼんやり視界に入っているものが、新しい価値創出・新しい市場開拓の種となることが起こりえます。

ビジネスにおけるセレンディピティの御利益(ごりやく)

セレンディピティは、「幸運な偶然を手に入れる力」「幸福な偶然を引き寄せる力」を意味します。これにより、ビジネスにおいて新たなアイデアや解決策が見出せたり、意図していない行動や出会いから、新たなビジネスの切り口がつかめたりします。全く予想外の出来事から、大きな機会(opportunity)につながることもあります。

さらには、これまでの常識を覆すようなイノベーションをもたらすこともあります。セレンディピティによって得られた情報やアイデアの中には、これまでの常識や経験を大きく覆すようなものも生まれます。ノーベル賞受賞者にはセレンディピティ伝説がよく見られます。このセレンディピティの御利益(ごりやく)を、『サステナビリティ・マインド』によって「ビジネスによる社会課題解決」につなげたいものです。

セレンディピティをいざなう、サステナビリティ・マインドを磨く方法

サステナビリティ・マインドを磨くには、次の5つのステップがおすすめです。

①サステナビリティを本質的・体系的に理解する
『葉っぱを見て、枝を見ず。枝を見て、木を見ず。木を見て、森を見ず』に陥らないように、本質的・体系的な理解に努める

②自分の頭で考える
自分の頭で考えるとは、「原理原則(principle)」を軸に考えるということ。 「原理原則」を軸に物事を考えれば、「これはやるべきことか?」 「どうすべきか?」 といった思考を正しく機能させることができる。「当たり前」の尺度を軸に考えることさえ徹底すれば、どんなに複雑な状況に置かれ、さまざまな情報が錯綜するなかであっても、混乱を避けることができる。サステナビリティ資するビジネスを希求するにあたっては、 「原理原則」こそが最強の思考ツールと心得る。 今のことだけなら他社や前例を見ればいい。未来の課題の答えを出したければ、自分の頭で考える

③『無意識の意識』にまかせてみる
サステナビリティを本質的・体系的に理解し、原理原則が身につけば、無意識の心に移し、勝手に働くのにまかせればよい。無意識の意識にまかせれば、気づかない(気づかなかった)ことに気づくことがある

④常に、考える
極端に言えば、『寝ても覚めても』 頭の片隅にテーマを留めておくこと。すると、景色が変わって見えたりする。何の変哲もない光景から気づきを得たり、新聞・テレビなどからの情報が深読みできるようになる。偶然が偶然ではなく、新しいアイデアや発見の糸口になる。まさに「幸運な思いつき」「偶然のひらめき」につながる

⑤論理的な思考で、アイデアを整理する
新しいアイデアがもたらされたら、サステナビリティの本質や原理原則に立ち返り、論理的に整理する。暗黙知を形式知に変換する

一人ひとりが自社ブランド

サステナビリティ経営において、環境や人権などの各分野での個別テーマを、パソコンの『アプリケーション」とすると、「サステナビリティ・マインド」は『OS(Operating System)』にあたります。これが旧バージョンで時代錯誤(anachronism)に陥ると、よかれと思ったことが仇(あだ)になることがあり得ます。反対に、しなやかに対応ができていれば、今まで気に留めてなったポイントが大事な付加価値になることに気づいたりします。

サステナビリティ時代の企業ブランディングにおいては、従業員一人ひとりが自社のパーパスをしっかりと認識し、サステナビリティ・マインドを醸成することが大前提です。その上で、日々の活動において『セレンディピティ』を引き寄せ、自社ブランドの担い手として、誇りと自覚をもって取り組む姿勢が重要です。

サステナブル・ブランディングとは、ビジネスと社会課題解決を両立させ、『らしさ』で競争優位を創り出す戦略メソッドです。事業戦略に『サステナビリティ要素』を融合し、自社の強みや持ち味を活かした資源を投入し、時代に選ばれ、次代にも輝き続ける企業を目指しましょう。

【細田悦弘 プロフィール】

公益社団法人日本マーケティング協会「サステナブル・ブランディング講座」講師 / 一般社団法人日本能率協会 主任講師
企業や大学等での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。
サステナビリティ・ブランディング・コミュニケーション分野において豊富な経験を持ち、 理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。
※本文著作権は細田悦弘氏に所属します。

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