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人手不足とブランディング

ブランディング

我が国の人手不足の現状・2022年度版

2022(令和4)年1月の帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」によると、調査対象企業の47.8%で正社員の人手が不足しており、非正規では28.0%不足している、という結果が得られました。これはCovid19の感染拡大が本格化する直前の、2020年同月とほぼ同水準です。

※グラフ出典:人手不足に対する企業の動向調査(2022年1月) (tdb-di.com)

今年に入って人手不足感が上昇した理由は、色々と考えられます。
調査では中・長期的には少子高齢化に伴う労働人口の減少と、介護離職者の増加が影響していると推測しています。一方短期的な要因としては、オミクロン株などの感染拡大防止策で濃厚接触者判定が厳しくなったこと、海外からの技能研修・実習生の就業がストップしていることが指摘されました。また昨今企業で推進が加速しているDX(デジタル・トランスフォーメーション)に対して、対応できる人材の不足を訴える企業も少なくないようです。
業種別にみると、正社員が不足しているのは上位から「情報サービス」「飲食店」「建設」「メンテナンス・警備・検査」であり、コロナ禍の影響で昨年は解消傾向がみられた人手不足感が、10業種すべてで再び「不足」に転じています。DXやデジタルプラットフォームの進展、オウンドメディアやSNSなど電子メディアは今後ますます多様化・多機能化していくと予想されますし、技能職の高齢化や絶対数不足が背景にある建築業、コロナ禍で需要が増加したメンテナンスや警備・検査、運輸・倉庫なども人手が足りなくなっています。

※グラフ出典:人手不足に対する企業の動向調査(2022年1月) (tdb-di.com)

こうした状況下では、企業にとって有用な人材の獲得が重要な課題となります。需要に見合う体制を構築できるだけの人員を確保できなければ、ビジネスが停滞し成長が見込めなくなるからです。

採用ブランディングという新しい視点

企業規模の大小にかかわらず、これからは「人の採用」においてもブランディングの考え方に基づいて戦略的に実施する必要があります。求人メディアで単に「こういう職種があります、こんな人を募集しています」と訴えかけても、あまたある求人情報の中に埋没してしまって、思うような効果が出にくいものです。知名度の低い中小企業であれば、なおさら効率よく人を集めなければなりません。

そのためにはまず、企業としてのブランド戦略の確立が不可欠です。企業により取り組みの手法はさまざまとなりますが、例えば「自分たちは何を目的にどんな使命を掲げ、どんな価値を社会に提供するのか」を示したビジョンやミッション、バリューを明文化することです。これが他社と自社を明確に差別化し、あらゆる企業活動の基準をなす鑑となります。

求人広告では労働条件や福利厚生、教育研修制度などが提示されますが、実はこれらはモチベーション、すなわち動機付けの要因にならないということが、フレデリック・ハーズバーグというアメリカの臨床心理学者によって指摘されています。「ハーズバーグの衛生要因」と呼ばれるこれらの条件は、充足することで不満足は解消されますが、仕事における満足感は達成感や責任、自己の成長や新たな物事への挑戦といった「自己実現要素」によってのみ得られるというのです。

そこで採用ブランディングでは「こういう好条件であなたをお待ちします」というスタイルを採らず「こんな社会を共に実現するための、仲間を募る」というストーリーづくりをまず意識するわけです。
ブランディングの考え方に基づいて戦略的な採用を展開することで、以下のようなメリットが期待できます。

? 欲しい人材、求めている人材に強くアピールできる
? 共感度の高い求職者が応募してくるため、採用辞退が減少する
? 当初から応募者(潜在的採用者)の高いコミットメントが得られる
? 効率が良いため採用にかかわるコストが低減できる
? 企業が発する求人以外の情報との整合性、一貫性がとれ信頼感が増す
? 独自のアピールを通じて企業の認知度が向上する
? 既存社員や他のステークホルダーへのメッセージにもなる

紙メディアが主流であった時代と異なり、SNSやオウンドメディアを活用したコンテンツマーケティングの手法は、求職者を対象とする採用ブランディングにとても有効です。応募を検討中の読者にとって、そこがどんな会社なのかは最も気になるポイントです。雰囲気や会社としての考え方など、入社する前に密度の濃い情報提供がなされれば、それだけで好感度もあがり、心理的な結びつきが強くなります。
※コンテンツマーケティングについては、こちらのコラムをご参照ください。
コンテンツマーケティングに関するお役立ち情報 (rhcnet.com)

今後人手不足がさらに進むと予想されるなか、より望ましい人材を確保して企業やブランドの未来を発展させていくために、あらためて「採用におけるブランディング」について考えてみてはいかがでしょうか。

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ブランド認知とは 知ってもらうことがブランディングの第一歩 (rhcnet.com)

ライタープロフィール

神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長

創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。

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