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ブランドのイメージは何で決まるのか

ブランディング

「あのブランドは環境を意識したエシカルなイメージがある」「あの会社は不祥事でブランドのイメージを落とした」
こんな言い方を、私たちは普段の会話の中で何気なく使います。「像、想像、心象」などと和訳されるイメージ(image)という言葉。ブランドの姿を感覚的に表象する「ブランドイメージ」とは、何によって形成されるのでしょうか。

記憶に強くアピールする事象が、ブランドイメージ形成に大きく影響する

2022年2月、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切りました。よもやと思われた事態の進展に、ロシア大統領であるウラジミール・プーチンに対する国際的な非難は高まる一方です。独裁者と名指しで批判され、3月には141ヶ国の圧倒的賛成を受け、国連で非難決議が採択されました。

しかし実は、それまでプーチンという「ブランド」は、国際社会からもおおむね好意的に評価されていたのです。2013年10月の米経済紙「フォーブス電子版」では、「世界で最も影響力のある人物」の第1位にプーチン大統領を選出しています。米国を中心としたシリア問題を平和裏に解決に導いた立役者として、なんとノーベル平和賞候補にノミネートされるという報道まで現れ、米タイム誌国際版では表紙を飾るほどの人気ぶりでした。
ロシア国内でも、経済を立て直し強い指導力を発揮するリーダーとして支持されていたプーチン大統領。それが2022年の現在では、180度異なる評価となっています。
これは、「隣接する独立国に軍事的侵攻を決定し、戦争を始めた国家指導者」というあまりにインパクトの大きい事象が、プーチンのイメージを完全に書き換えてしまったためです。

イメージというものは、客観的にその形をとらえることができません。目に見え、耳で聞くなど五感を通じて感知する情報を集積・統合し、形作られるおぼろげな像を私たちはイメージと呼んでいます。資本主義陣営の指導者と異なり、経済効率だけで政治を執り行わない信念を持った強いリーダー、という彼のイメージ像は、ウクライナ侵攻により霧消しました。

ブランドイメージを形成する「マインド」「ビジュアル」「ビヘイビア」

これに似た事象が、ブランドの世界では時折生じます。特に大きな不祥事など記憶に残りやすい、報道が広がりやすい事件が起こると、評価の高かったブランドほど「裏切られた」印象が強まり、イメージを大きく損なう場合があります。
RHCのブランディングnoteでも解説していますが、企業のイメージやブランドのイメージというものは、基本的に「マインド」「ビジュアル」「ビヘイビア」の3つの要素から形成されます。
MIとは(マインド・アイデンティティ)ブランドの根幹を成す CIの三大要素1|RHCブランディングnote (rhcnet.com)
マインドの要素は、外部からはなかなかわかりにくい部分です。そのため多くのブランドがこれを可視化し、企業理念やミッション、ビジョン、バリュー、あるいはクレドなどのように文章の形で定着、内外に示すようになっています。
これをシンボルマークやイメージカラー、商品パッケージ、webサイト、店舗、車両など目に見える媒体で表現したものがビジュアル要素です。コロナ禍の街で、商品を届けに毎日奔走する宅配便事業者は、その配送車のデザインやカラー、ユニフォーム、配送パッケージが重要なイメージ形成媒体になっています。 宅配便を届けてくれるドライバーはかなり忙しいはずですが、夏の猛暑でも、雪降る寒中でも笑顔を絶やさず、丁寧にユーザーと接してくれます。不在にして荷物を再配達してくれる場合でも、いやな顔をせず明るく挨拶を交わす担当者がほとんどです。
彼ら・彼女らは単なるドライバーではなく、ユーザーと接する現場最先端の存在として、事業者そのもののイメージ形成を左右する営業パーソンであることを十分認識しているのです。こうしたブランド構成員の態度・行動が、ブランドイメージ第3の要素である「ビヘイビア」です。
もしもドライバーが交通法規を無視したり、お客さまの荷物をぞんざいに取り扱ったり、あるいは交差点で大声で怒鳴ったりするのを目撃されたら、それまで築き上げたプラスの印象は消え去り、ブランドイメージはたちまち低下してしまうでしょう。あたかもプーチン大統領の印象が劇的に低下したウクライナ侵攻のように、です。

3つの要素は無数のタッチポイントに表れる

「マインド」「ビジュアル」「ビヘイビア」は、業種・業態によって表現、伝達するための媒体が異なります。またBtoBの場合とBtoCの場合でも違ってきます。
これら3つの要素は、ビジネスの現場において「マーケティングの4P」と呼ばれるProduct、Place、Price、Promotion、または「4C」として知られるCustomer Value、Convenience、Cost、の4つの領域で「タッチポイント」化されます。
タッチポイントとは、ブランドとユーザーが接触する様々なポイントのことで、最近では顧客体験をシミュレートする「カスタマージャーニー」の考え方と合わせて語られることが多くなっています。具体的には、「商品・サービスそのもの」「外観・パッケージ」「店舗・サイン」「接客」「web、SNS」「広告」「IR」「口コミ、評判」などがあげられます。デジタルメディアが発達したいま、こうしたタッチポイントはますます増加する傾向にあります。
ブランドイメージを良好なレベルに保つためには、これらのタッチポイントにおける顧客やその他ステークホルダーとの接点を、ブランドとして目指すべきイメージに合わせて
・一貫性
・整合性
・質的水準
に留意してマネジメントしていかなければなりません。

リサーチによってブランドイメージを把握する

ブランドイメージを的確にマネジメントするには、「現状どうなのか」を把握し、ブランドのビジョンに合わせて「今後どのようなイメージを目指すのか」を明確にする必要があります。
現状把握の手法としては、インタビューとアンケートが有効です。主体者である当該企業が実施するとバイアスがかかる場合があるため、外部調査機関を利用するケースがほとんどです。ただ、最近はwebマーケティングの技術が進んだこともあり、SNSやwebサイトを活用した調査や分析が増えてきました。
第三者機関が実施する場合は、競合との自然な比較が可能、という利点もあります。例えば、イメージ調査の調査項目として 「先進的な感じがする」「親しみやすい感じがする」など複数の印象評価項目を設定し、「非常にそう思う」から「まったくそう思わない」の5段階で評価していただく調査フォーマットを用意すれば、自ブランドと競合ブランドの結果を比較することが可能です。あらかじめ調査項目をロジカルにプログラムしておくことで、ブランドイメージの現状と理想をポートフォリオ分析のようにプロットし視覚化することもできます。
社内、社外関係者を対象としたインタビューやグループ・ディスカッションで得られる定性的な情報と、アンケート調査で可視化される定量的情報を総合し、現在のイメージと期待されれるイメージが明確になります。
このデータを参照し、ブランドのマインド・ビジュアル・ビヘイビアを現出するタッチポイントで一貫性・整合性・質的水準を保って計画的にマネジメントすることができれば、ブランドイメージを損なわず、望ましいイメージの形成が可能となります。

リボンハーツクリエイティブでは、クライアント企業様の望ましいブランドイメージ形成を支援するさまざまな施策を展開しております。どうぞお気軽にお問合せ、ご相談ください。

ライタープロフィール

神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長

創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。

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