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細田悦弘の企業ブランディング 〈第11回〉 「チーム松山」に学ぶ!コーポレート・ブランディングの真髄

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メジャーのマスターズで、松山英樹選手が日本勢として初の優勝を飾りました。
「チーム松山」が脚光を浴びています。
彼の計り知れない鍛錬と卓越した能力はもちろんですが、「キャディーのお辞儀」が琴線に触れる話題となりました。

四大メジャー大会、日本人初の優勝

ゴルフのマスターズトーナメント最終日が4月11日、米ジョージア州のオーガスタ・ナショナルGCで行われ、松山英樹選手が日本勢として初の優勝を飾りました。
29歳の彼は通算10度目の挑戦で、日本ゴルフ界の悲願を達成しました。
全英オープン、全米オープン、全米プロ選手権を含めた男子ゴルフの四大メジャー大会で日本人が優勝するのは初めてで、特にマスターズ制覇はアジア人として初だそうです。

試合後の表彰式で優勝者に贈られるグリーンジャケットに袖を通し、「この素晴らしいオーガスタ・ナショナルで、ここに立てることがすごくうれしく思っています。そして多くのファンの皆さん、ありがとうございました」と日本語であいさつし、「サンキュー」と大きな声で叫びました。
松山選手は優勝賞金の獲得もさることながら、「終身の大会出場権」を得ました。ゴルフ界のブランドとしてのステータスが確保されました。
メジャーのレジェンドであるジャック・ニクラスが、「青木功やジャンボ尾崎を足したような選手だ。体も大きく強く、素晴らしいパッティングタッチを持っていて最高のゴルフが備わっている」と松山選手を評したこともあるように、実力とセンスは申し分ありません。
ただし、この域まで登りつめた原動力はチームの支えであり、この実力を「持続可能」とするためには組織の力が不可欠といえましょう。

チーム松山の悲願と「キャディーのお辞儀」

松山英樹氏を支える「チーム松山」にとっても悲願であったマスターズトーナメントで優勝が決まると、松山選手とスタッフは次々と抱き合い感涙の情景でした。
トレーナーは「彼が努力し続ける姿を8年間見てきた。報われて本当によかった」と感慨もひとしおでした。
過去にもメジャー制覇に迫りながら、あと一歩届かなかったが「英樹が一番勝ちたいと思ってきたマスターズで勝てたのがうれしい」と歓喜でした。また、大学の後輩にあたるキャディーにとっては、初めて味わう優勝でした。
「僕より(松山)プロの方が数百倍、苦しかったんじゃないか。キャディーが代わったから成績が良くないとか言われるのはすごく嫌だと思うので」と思いやっていました。
10度目の出場で、コースを熟知する松山選手を間近に見て「一つひとつのショットの全てに守りと攻め(の要素)が入っている」と元選手の視点で感嘆していました。

そして何と言っても優勝直後、キャディーを務めた彼が18番グリーンのピンをカップに戻すと、帽子を取ってコースに一礼した姿。
真摯で謙虚な様子の動画がツイッターなどで瞬く間に広がり、感嘆の声が上がりました。
アメリカのスポーツ専門局が、このときの動画をツイッターに投稿したところ、非常に多く再生され大反響を呼びました。
ツイッター上には、アメリカ人を中心に「すごい光景だ」「なんてすばらしい瞬間なんだ」「清々しい!」「さすが日本人」と絶賛するコメントが次々に書き込まれました。
このニュースが日本で報道されると、日本人もしみじみ感動しました。「同じ日本人として誇りに思います!」などのコメントが相次ぎました。松山選手もグリーンジャケットを着て望んだ優勝帰国会見において、「良い行動をしていたんじゃないかなと思いましたし、僕も一緒にできたら良かったなとも思いました」と語りました。

日本では、剣道などで「礼に始まり礼に終わる」といわれますし、野球場やサッカー場などでも、選手たちが深々と一礼するという光景を当たり前のように見かけます。
その日本人の感謝や礼節、敬意といった美徳が、マスターズという大舞台であのキャディーの振る舞いを通してアメリカ人をはじめ世界中の人々に伝わったことは、日本人としての誇りをじわりと感じた方が多かったことでしょう。

ここに、「チーム松山」のブランド力の真骨頂が垣間見られました。卓越した能力だけではなく、チームメンバーのさりげない一挙手一投足がブランドに影響を与えるということです。
実力はもちろん大前提ですが、それを『持続可能』にするためには、チームブランドによる内外からの支援はかけがえのないドライバーとなります。

「当たり前のことを当たり前にやる」組織風土

ブランディングは、究極的にはすべての社員・スタッフが外部との接点(タッチポイント)において、ブランドの価値観や考え方を体現していくことになります。
社員がそれぞれの立場・部署において、ブランドが目指すものに従って思考し行動する。
その結果、ブランドは、ステークホルダーに対して商品・サービスとして形になり、情報として伝わり、社員のビヘイビアによって印象付けられるということになります。

こうした背景から、コーポレートブランドの構築・向上を目指す企業にとっては、社外(エクスターナル)に対してブランド構築していく前提として、まずは「インターナル(社内)ブランディング」に取り組むことが大変重要です。
インターナルブランディングで目指すのは、Purpose(パーパス)や価値観(バリュー)に則り、ブランディングの考え方や自社のブランドを理解・浸透させることにより、あらゆる事業活動や従業員の立ち居振舞いにまで反映させ、社外におけるブランド価値向上に結び付けていくというものです。
あらゆるステークホルダーとのタッチポイントで企業の評判(Reputation)とブランドは創られることを肝に銘じ、「一人ひとりが自社ブランド」として、ブランドを体現していくという意識を持って業務に携わることです。

自社コード(価値判断基準)に基づき、「当たり前のことを、当たり前にやる」組織風土づくりは、時代に適応する意識改革活動として、現代社会におけるコーポレート・ブランディングの鉄則です。

【細田悦弘 プロフィール】

中央大学大学院 戦略経営研究科フェロー、一般社団法人日本能率協会 主任講師
企業や大学での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。
CSR・ブランディング・コミュニケーション分野において豊富な経験を持ち、 理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。
※本文著作権は細田悦弘氏に所属します。

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