サステナビリティ時代の「良い会社」とは 細田悦弘の企業ブランディング 〈第3回〉
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サステナビリティ時代の「良い会社」とは
「大きい」「有名」「上場」、すなわち大企業、有名企業、上場企業といった具合です。
年功序列、終身雇用、企業内労働組合が、日本的経営の三種の神器といわれていた頃ですので、今となっては牧歌的な時代だったかもしれません。
ところが今この時代において、「良い会社」の条件を3つ挙げるとすると、何だと思いますか。
直感的に一昔前との違いを察知し、『社会や地球への配慮』が想起されるのはふつうです。もちろんその通りですが、やはり営利企業であることに鑑み、下記の3つを提示します。
➀儲かっている会社〈収益性〉
➁伸びている会社〈成長性〉
➂社会に対して良い影響を与えている会社〈社会性〉
民間企業である限り、収益を上げないと、従業員に給料が払えず、金利も払えず、配当もできず、税金も納められない等の経済的責任が果せません。
それと、一発屋で終わったり下降線を辿りたくないので伸びないといけません。
➀➁の「収益性・成長性」は、昭和・平成・令和を通じて、基本的な条件といえます。
ところが、『サステナビリティ』が世界共通の価値観となった現環境下においては、➂の「社会性」が一段と注目されています。
通常、見識ある経営者やビジネスパーソンは、この「社会性」について、次の2つのスタンスで捉えているようですが、バージョンの違いがあるようですので確認してみましょう。
➀いまの時代、企業だけ儲けていてはいけないので、社会や地球にも良いことをしなければならない
➁社会や地球のためになっている企業こそが、収益も上がるし伸び続けられる
前者においても一定レベルの見識といえますが、特にここ数年、後者のスタンスが「良い会社」と評されるための必要不可欠な条件となってきています。
とりわけ上場企業に課されているコーポレートガバナンス・コードのサブタイルは、「持続的な成長・中長期的な企業価値の向上」ですので、この「社会性」が求められています。
非上場であっても、金融機関等のステークホルダーは、企業評価に際して、このようなモノサシを当て始めています。コロナ禍によって、この流れは一段と強まっています。
ミレニアル世代・Z世代といわれる就活学生や若手社員は、金銭報酬だけでなく『非金銭報酬』も求めています。
給料があまりにも低いと不満だが、給料だけが高いだけでは満足には至らない。
満足感を得るためには、『給料以外』も欲しい。それは、仕事を通じて「社会のためになりたい」「自分を高めたい」といった願望です。
そして今だけでなく、10年後・20年後の「良い会社」を選びたいと思うことでしょう。昔のように、『忠誠心内蔵型』で入社してはきませんので、後天的にロイヤルティ(帰属意識)やモチベーションを獲得することが必要です。
そのためには、時代と調和した「社会的存在意義」を発揮することが重要です。
企業は、社会ともに発展する
従来散見されたような、企業の発展ありきで突っ走り、地球に害を与えたり、社会に迷惑をかけることが看過されなくなりました。
現代においては、社会的価値を毀損しながら経済的価値を向上させることは御法度です。
そこで、「サステナビリティ(Sustainability:持続可能性)」というキーワードに世界の注目が集まり、企業経営やブランド戦略の中核にこの概念をビルトインすることが求められています。
「サステナビリティ」という言葉はこれまで、企業活動を行うにあたって「地球」を大事にするという趣旨で使われてきました。
それが現在では、企業活動をすすめるにあたって地球や社会を大切にすれば、企業もまた持続的に成長させてもらえるという脈絡で語られるようになりました。
地球が壊れれば、社会が壊れる。
社会が壊れれば、経済が壊れる。
経済を順調に発展させたいのであれば、地球や社会を大切にする。
ということです。
企業は、地球環境や社会を前提に存在していることは自明です。
したがって、今日の経営にあたっては、「盤石な地球」と「健全な社会」があってこそ、将来にわたってのビジネスが円滑に展開できるという認識に基づく企業姿勢が強く求められています。
ビジネスと社会課題解決を融合させ、『らしさ』で競争優位を創り出す戦略メソッドが、サステナブル時代の企業ブランディングです。
ポストコロナ時代の「良い会社」をもっともっと育てましょう!
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