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細田悦弘の企業ブランディング 〈第2回〉 「完売マスク」とサステナブル・ブランディング

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店頭の「マスク品切れ」の貼り紙が定番だった頃に比べ、市中に一定量が出回るようになり、だいぶ落ち着きを見せてきました。
気が付けば、あれほど渇望したマスクですが、今は選んでいませんか?

値下がりするマスク、完売するマスク

新型コロナウイルスのパンデミックで、専門外の業界から医療器具等の生産に乗り出したり、「社会のお困り事」 の解消に挑む企業が注目されました。
そうした状況下のティピカル(典型的、代表的)な例が、「マスク」でしょう。当初は、「マスク、品切れ」の貼り紙を見て落胆しつつ、もしも見かけたら一目散(いちもくさん)に購入していた光景がよく見られました。
それがここにきて、今ではドラッグストアの店頭でも見かけるようになり、報道上でも「マスクバブルの崩壊」といわれています。いきおい、巷(ちまた)では価格の下落に歯止めがかからないようです。

ただそんな中、「マスク、完売」という現象が注目されます。その代表例が、次の3社が満を持して投入した製品といえましょう。
『即日完売』のヒット商品となりました。
➀シャープのマスク
➁ミズノのマウスカバー
➂ユニクロのエアリズムマスク
では、サステナブル・ブランディングの観点から、その「選ばれる理由」を解説します。

マスク と サステナブル・ブランディング

コロナ禍における「社会課題解決型の事業」 は、企業が最も力を発揮できる分野であり、本来あるべき、サステナビリティ視点のビジネスの形といえましょう。
社会課題に対応することで新しい技術や仕組みを生み出す契機となります。Creating Shared Value(CSV:共通価値の創造)」として、「社会のニーズや課題に取り組むことで社会的価値を創造し、同時に経済的価値が生み出される」というアプローチといえます。
新しい価値創造や新しい市場開拓の機会創出につながります。

ところがマスクのように、時を経て参入が相継ぎ、さまざまなルートから市場に出回るようになると、コモディティ(Commodity)化が起きてしまいます。高付加価値や希少価値を持っていた商品の市場価値が低下し、一般的な商品になることを指します。以前のような市場価値が維持できず、価格が主な比較対象となるため低価格競争を余儀なくされます。
コモディティ化を抜け出すためには、『ブランド力』を発揮する必要する必要があります。
マスクという商品は、現代にふさわしい社会課題解決型のビジネスですが、それだけですとやはり競合するし、価格競争に陥りがちです。
そこから更に『自社の得意技(らしさ)』を発揮することで、時代が求める競争優位の源泉となるサステナブル・ブランディングに至ります。

完売マスクに学ぶ、ブランドが果たす役割

マスクは、通常の日用商品と異なり、「衛生用品」です。何といっても、安心・安全でしょう。
日本の品質基準を満たしていなかったり、日本衛生材料工業連合会の「全国マスク工業会会員マーク」がついていなかったりすると、品質が担保できないので、大手のドラッグストア等に仕入れてもらえないということになり得ます。
つまり、予選を落ちするということです。
これに対して、この3社は「シード権」を持って、市場に迎えられました。これらの完売したマスクは、長年の「安心感」や「信頼性」に裏打ちされていることが第一義です。

とりわけ、シャープの果敢な意思決定と迅速な市場投入は、社会から歓迎されました。
3月から三重県多気町の液晶ディスプレー工場を活用してマスクの生産を始め、4月に自社サイトを通じて販売したところ、サイトにアクセスが集中して接続しにくい状況が続き、すぐに販売は抽選方式になりました。シャープ・ブランドは、永年のものづくりにおいて一日の長(いちじつのちょう) があり、決して拙速ではなく安心だろうという信頼感がありました。

そして時期的に、ミズノのマウスカバーが歓迎されました。マスク着用が新常態となり、用途に応じて使い分けたい消費者ニーズをくみとる動きが広がってきました。
新型コロナの長期化により初めての夏を迎えることになり、熱中症などの暑さ対策が急務となりました。
『夏マスク』のニーズです。そこで、ミズノは水着などに使う素材を採用し伸縮性を高めたマスクの販売を始めたほか、裏側に涼感素材を使ったマスクも投入しました。
繰り返し手洗い洗濯が可能で、着け心地を追求したというわけです。
スポーツ選手が着けたことも人気を呼び、ミズノとスポーツは、「らしさ」の真骨頂です。

ユニクロのエアリズムマスクは、速乾性や通気性に優れる機能性肌着「エアリズム」の素材を使っており、蒸れやすい夏を乗り切るマスクの本命として消費者の注目を浴びました。
ユニクロの持つ、服の素材感やモノのクオリティーが極めて高いというイメージとともに、「ユニクロといえば、エアリズム」というエッジが効いています。当初はトップが「マスクは売らない」としていたそうですが、機能性肌着「エアリズム」の素材のマスク発売へと状況を変えたのは、電話・メール・SNSによるユニクロのマスクを求める声が数多く寄せられ、ハガキまで届いたからだということです。

社会のお困り事(期待)にビジネスで応え、「らしさ」を発揮するスタンスこそが、サステナブル・ブランディングの要諦です。

ウィズコロナ時代に、選ばれ続けるために

新型コロナは「変化への対応力」を軸に企業の選別を一段と進めています。
企業がゴーイングコンサーン(将来にわたって継続)であるためには、変化にしなやかに対応し、その上で「らしさ」を発揮して、選ばれ続けることが求められています。
それが、サステナビリティ時代の企業ブランディングです。

【細田悦弘 プロフィール】

中央大学大学院 戦略経営研究科フェロー、一般社団法人日本能率協会 主任講師
企業や大学での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。
CSR・ブランディング・コミュニケーション分野において豊富な経験を持ち、 理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。
※本文著作権は細田悦弘氏に所属します。
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