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社内報を活用してインターナル・ブランディング

ブランディング

我が国における社内報の歴史は古く、その始まりは100年以上前に創刊された鐘淵紡績(現・カネボウ化粧品およびクラシエ)の「鐘紡の汽笛」だと言われています。全国に点在する三万人の従業員に対し、十分なコミュニケーションが図れるよう当時の工場支配人が導入を決めたというエピソードが残されています。

情報技術が発達し、内外に対する企業広報の在り方も進化した現在ですが、基本的には社内報の目的は「鐘紡の汽笛」と同じ情報流通とコミュニケーションの活性化にあります。社内報は「コンテンツ=情報」を「メディア=乗り物」に載せて、企業の中を上から下へ、下から上へ、また右へ左へと往来することでその機能を果たす存在だと言えるでしょう。

バブル後の景気低迷期にはコストダウンの対象ともなりましたが、最近では電子化やリモート勤務の推進なども要因となって、インターナル・ブランディングの重要なツールとして見直されています。

1.紙媒体の社内報を使う際のアイデア

紙媒体の社内報は、印刷や配布にコストがかかる、形になるまでに時間がかかる、などの理由から電子メディアに押され、最近では廃止する企業も出てきました。しかし企業の歴史がある程度あり、電子データ化される以前のバックナンバーがもし残っているとしたならば、それはネタの宝庫です。

1-1.温故知新
例えば、現在の姿と比べ時代を感じさせる古い社屋の写真、若き日の経営幹部やトップのスナップ、創業当時の社章やスローガン、経営陣の言葉などはギャップがあればあるほど目を引くアイキャッチになります。そこから事業の変遷や創業の理念などを抽出し、今後目指す企業像へと結びつけるストーリーが導き出せれば、過去と現在が結びつき歴史に立脚しつつ持続していく、自社のイメージが読む人に印象付けられます。

1-2.じっくり「読ませたい」ときこそ紙メディア
web上で、特にスマホで情報を得ることに慣れた現代人は「面白くない」と判断したコンテンツからすぐに離脱する傾向を持っています。スクロールやページの遷移が多かったり、文章が長かったりすると、それだけで拒否反応を示すのです。この点では、紙媒体に一日の長があります。
デザインやレイアウトがよく考えられた雑誌の誌面は、文字が多く難しそうな内容でも読者に迫り、不思議と読ませる力を持っているものです。またトップが語る事業戦略などといった重要なコンテンツは、視聴環境や時間、音声などで制約される動画よりも印刷されたものを読む方が、深い理解や共感を得られる場合があります。
スマホやPCの画面で切り取られた範囲だけしか見えないwebに比べ、ページ全体が見渡せるマガジン型の社内報はトーン&マナーで印象を形成しやすく「読ませやすい」媒体なのです。

2.web社内報の利点

web社内報の最大の利点は、速報性と双方向性です。某企業では、担当者が朝出社した社員にインタビューを行い、その日のうちに記事として配信した例もあるそうです。アンケートやコンテスト、投票など読者参加型の企画は、webを活用すれば手間とコストをかけずに実施と集計ができます。
このほか「社員おすすめのランチ」「プレゼンや企画の好事例」など、リンクやアーカイブが活用できる場合などにも、web媒体は向いています。コンテンツを立体的に組み合わせ、効果的に活用しましょう。

3.企画をどう立案するのか

社内報の企画を考える際には、その目的を考慮した上で媒体と内容を検討していきましょう。
周年事業、経営統合、戦略発表など重要な節目では、社内メディアを総動員して情報伝達と理解・共感の形成に努める必要があります。その中で、社内報がどのような役割を果たすのか。誰が、どのタイミングで情報を発信するのか。図や画像、動画やデータ等の素材をどのように表現し組み合わせるのが効果的か。それを計画するのは、社内報担当者として力の発揮しどころです。
平時の場合は、上下のコミュニケーションよりもヨコのコミュニケーションに注力した企画が多くなります。普段あまり接点のない部署や事業所の様子をレポートしたり、各地の名物社員の紹介、店舗周辺のルポなど比較的軽めな話題で、楽しく読めるコンテンツが喜ばれます。
以前目にしたもので印象に残っている社内報企画は「ちょっと達人」というタイトルでした。プロフェッショナルというほどではないもののあるジャンルに精通していたり、技術を持っていたりする社員を紹介する内容で、本業とはまた別の一面がその人となりを豊かに表現していました。

4.固定概念にとらわれない自由な発想も大切

最後に紹介するのは、マガジン型でも電子メディアでもない「壁新聞型」の社内報です。ショッピングセンターの中にあるその施設では、広い店舗を持ちたくさんの社員・アルバイトが働いています。バックヤードに行くと細長い従業員通路があり、その両側の壁に10数メートルにわたって壁新聞が掲示されているのです。

制服を着た従業員全員の写真と簡単なプロフィール、重要度・緊急度が数字で示された伝達事項、お客様からのクレームやお褒めのメッセージ紹介、各部署や店舗の情報、切り取り可能なクーポンなど様々な情報がそこに凝縮されています。

「社内報」と題されているわけではないため、従業員は壁に貼られているそれらを社内報とは認識していないかもしれません。しかし必要があればすぐに貼りだすことができ、情報の追加・更新が簡単で、そこでしか見られないため情報流出リスクも低いという利点は、他のメディアにはありません。立地特性を活かした良い事例と言えるでしょう。

冒頭で述べたように社内報は、インターナルでのコミュニケーションやブランディングにおいて「適切な情報を適切な乗り物に乗せて、縦横に流通させる」機能を果たします。その目的をよく見極めて、形にとらわれず望ましいメディア計画を進めてください。

ライタープロフィール

神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長

創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。

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