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SDGsの普及により今注目の「CSV経営」とは

SDGs

1. マイケル・ポーター教授の提唱した「CSV」

「CSV」とはCreating Shared Value(共通価値の創造)の略で2011年にハーバード大学のマイケル・E・ポーター教授とマーク・R・クラマー氏が論文を発表しました。
企業が本業を通じて社会問題を解決し、経済的利益を生み出すことを目指します。
2016年時点で下記のグローバル企業はcsvの取り組みを始めています。
ゼネラル・エレクトリック(GE)やグーグル(Google)、IBM、ネスレ、フィリップス、ダノンなどです。
ポーター教授はこのように言っています。「企業は単に経済的価値を最大化するためのものではなく、社会との結合を目指すべきである。」

2. 「共通価値の創造」とは

共通価値の創造とはいったい誰と共通価値を創造するのか。「社会」と共通価値を創造することを指します。今までのCSRは企業の受け身な姿勢が表れていました。
CSRの略はCorporate Social Responsibility(企業の社会的責任)この言葉自体が受け身だとは思わないでしょうか。社会的責任があるから仕方なく取り組んでいるようにも受け取れてしまいます。どの企業も横並びで植樹やごみ拾い、NPOへの寄付といったものが散見されます。もちろんどれも社会にとって良い事だとは思います。
しかし、社会には企業が対応できる課題が前述以外にも山のようにあります。
この課題に取り組み経済性も生み出すことで、社会との共通価値を創造していきましょう。という考え方が「CSV(共通価値の創造)」なのです。

3. ネスプレッソのCSV取り組み

ネスプレッソは2000年以来ネスレの稼ぎ頭の一つで30%の成長続けているサービスです。
エスプレッソマシンと世界各地の高品質コーヒー豆の粉末が入ったカプセルを組み合わせたサブスクリプション型のサービスです。
アンバサダーキャンペーンではエスプレッソマシンの無料貸し出しを行いコーヒーを日常の飲まれる方々に人気を博しています。
しかし特殊なコーヒー豆の安定供給は極めて難しく、ほとんどのコーヒー豆はアフリカや南米の貧困地域の零細農家が栽培しています。
低い生産性、粗悪な品質や収穫高を制限する劣悪な環境という悪循環の中にいます。このような問題を解決するためにネスレは調達プロセスの見直し、農法に関するアドバイスや銀行融資、苗木、農薬、肥料などの資源確保など農家を徹底的にサポートしました。その結果1ヘクタール当たりの収穫高が増加し、高い品質のコーヒーが生産されるようになりました。
農家の所得は増え、農地への環境負荷が減りました。ネスレは高い品質のコーヒー豆の安定供給ができるようになりました。

また、世界第二位のコーヒー豆の生産国ベトナムでは水不足が進行しています。
この地域では260万人がコーヒー豆生産で生計を立てています。大部分のコーヒーは「中央高地」で生産されており、その地域で使われる水の96%がコーヒー豆栽培に使われていました。気候変動と農家による水の使い過ぎで水不足が一般世帯にとって深刻化しています。
ベトナムは過去30年間で最悪の干ばつに見舞われており一部の地域では降雨量が昨年より86%も下回りました。さらに11月から4月までの乾季の間は通常必要とする水よりも60%も多く水を使うようです。水不足のリスク以外に農家は財務コスト、人件費の問題に直面しています。
井戸から水を供給するためのポンプを運転する燃料の購入など農地に水を引くために膨大な時間を費やしているのです。
ネスレは現地農業アドバイザーの協力を得て、この問題の解決策を見つけました。
必要な道具は水のペットボトルとミルクの空き缶でした。ペットボトルを地面に逆さに差し込み、内部の結露の度合いを観察することで、土壌の水分量を測ることができます。
水滴がほとんどなくなったら、乾季で最初のかんがいを行う時期が来たということです。
複雑な道具だと農業従業者たちが使いこなせない可能性もあります。この方法は効果的でした。
ベトナムのコーヒー農家はこれまで、水やりのたびに1本の木につき700〜1000リットルの水を使っていましたが、今では300〜400リットルで同じ量のコーヒーを収穫できるようになりました。多くの場合、水の使用量を半分以上も節約したことになります。

これらのネスレが取り組んだ事例はまさにCSV(共通価値)が創造されたといえるでしょう。
農家の生産性を上げることで育んだ農家との共通価値、水不足を減らし築いた地域社会との共通価値。
水はネスレの事業に不可欠なもの。
自社WEBサイトでもポールブルケ会長が持続可能な解決策の模索を語っています。
https://www.nestle.co.jp/stories/water-is-life

国連の発表では2030年までに水需要が供給を40%上回ると予測されています。
原材料の洗浄や加工、設備の冷却、洗浄設備、衛生管理、ボトル入り飲料水事業に使われます。
43カ国の7億人の人々が水不足に苦しんでいる現状において、ネスレは節水プロジェクトや取水量ゼロ技術といったイノベーションの導入を通じて、事業全体での水の削減、再利用とリサイクルを継続しています。
https://www.nestle.co.jp/csv/old/water/efficiency

このような取り組みは将来ネスレの大きな成長材料となるでしょう。世界の水不足問題はネスレだけの問題ではありません。
全世界の農地でこの世な問題が顕在化されることは明白です。ネスレが育んだ、経験、技術が大きく役立ち新たねビジネスモデルとなるでしょう。
これはまさにCSV経営といえます。地域社会の課題・問題を自社の事業を通じて解決し、新たなビジネスモデルを生み出していくプロセスこそが共通価値の創造なのです。

ライタープロフィール

神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長

創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。

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