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細田悦弘の企業ブランディング 〈第17回〉空港グランドスタッフに学ぶ!サービスブランディング

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NHK「プロフェッショナル」で、接客技術NO.1に輝いた空港グランドスタッフが登場しました。すてきな空の旅…。想起するのはやはり機体やパイロット・CA(客室乗務員)ですが、エアラインのブランディングはすべてのタッチポイントで実現するものです。

接客サービスのプロ

NHK総合のドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、接客技術NO.1に輝いた空港グランドスタッフの女性が登場しました。主人公は、「空港カスタマーサービス・スキルコンテスト」でグランプリを受賞した接客サービスに定評のある羽田空港で勤務するスタッフです。番組では、羽田空港内を走り回り、熱意と信念で旅客対応に当たっている様子などが紹介されました。コロナ禍で未曽有の危機においても、ささいなことにまで心を配り、お客様を飛行機へ安全・定刻通りに搭乗させるプロです。日々磨き上げている『おもてなしの心』 に、エアラインのブランディングの担い手としての真骨頂があります。

エアラインは、サービス産業

エアラインという商品は究極的には、ある地点からある地点まで「移動時間」を売っているビジネスであり、サービス産業といえます。「サービス」の基本的な特徴として、次の4点を確認してみましょう。(近藤隆雄著「サービス・マネジメント入門」より)

1.無形性
サービスの核となる定義は「効用をもたらす活動そのもの」というのが、世界のサービス研究の定説となっています。活動は、物理的な「形」をとることができません。物質ではないので、流通させることも、作り置きをして在庫としておくこともできません。

2.生産と消費の同時性
活動対象が人である場合、サービスは生産と同時に消費されます。航空機を利用して目的地に移動中の乗客は、空間移動という内容のサービスを、エアラインの機体やスタッフから提供されています。会社からすればサービスの生産であり、乗客からすればサービスの消費となります。歯の治療や美容院・エステ等も同様です。
この生産と消費の同時性の特徴なところは、時間と場所の重要性です。モノの場合は、在庫と流通によって制約は軽減されますが、サービスにおいては、顧客が生産されている場所に出向かなければなりません。この点がエアラインにとって、「空港」という場が決定的なポイントとなります。

3.顧客との共同生産〜お客様がサービス活動に参加する
サービスは、生産者と顧客が共同して作り出します(コ・プロダクション)。サービスは、提供者にとっては活動、顧客にとっては体験であり、顧客もその生産活動の一役を引き受けます。飛行機に乗って移動するためには、空港に行って、チェックインして、所定のゲートから搭乗し、機内では客室乗務員の指示に従うといった具合です。この特徴は、医療サービス、理美容サービス、教育サービス等にも当てはまります。より能動的・協力的に参加すれば、一層恩恵が受けられるというわけです。

4.結果と過程の両方が重要
サービスを購入する際には、なんらかの結果(望ましい状態)を求めます。鉄道やタクシー等での移動、歯の治療、教育機関での能力開発等です。こうした望んでいる成果はサービス活動の結果として生まれますが、働きかけの対象となる顧客は、結果が出るまでのプロセスも否応なく体験することになります。そこで、その活動過程ができるだけ快適であるに越したことはありません。顧客にとっては、結果と過程の両方を体験し、その両方が大事なのです。テーマパーク、映画館、レストランなどでは、むしろ結果よりもそのサービスの過程の方が大切となります。行った、観た、食べたという結果もさることながら、そこで楽しく豊かな経験をしたことが価値を生みます。空港グランドスタッフは、エアラインの価値提供プロセスにおいて大きな役割を担っています。

一瞬に、心を込めて

本番組のタイトルは、「一瞬に、心を込めて?空港グランドスタッフ」でした。「移動時間」という無形の商品を提供するエアラインとして、サービス産業としてのブランディングが競争優位の源泉となります。ブランドは、マス広告だけでなく、あらゆる顧客接点(タッチポイント)で出来上がります。その接点を担うのは、すべての従業員です。サービスのクオリティは、顧客と接する現場スタッフに大きく依存します。

スカンジナビア航空の社長として、サービス改革を実現したヤン・カールソンは、著書の中で、顧客と直接接する従業員の最初の秒の接客態度こそが航空会社の印象を決めると指摘した。まさに、書名はズバリ「真実の瞬間(MOT / Moment of Truth)」です。「真実の瞬間」とは、もともと、闘牛士と闘牛のどちらが勝つか負けるかが決まる、両者が向き合う瞬間のことを指すと言われます。まさに「真実の瞬間」とは、顧客の脳裏にそのブランドの印象を刻みつける、ブランドと顧客の関係の成否を分かつ接点を意味します。サービスブランドにとって、最も重要な「真実の瞬間」は、最前線の従業員による一瞬の接客シーンといえましょう。

ブランディングとは、企業が「自社らしさ」への顧客の期待に応え続けることにより、信頼と愛着をもたらす揺るぎない関係(絆)づくりです。この顧客からの期待に応え続けるという「約束」を守り、すべてのタッチポイントで体現するのが従業員です。そのためには、「インターナルブランディング(社内へのブランド意識醸成のための働きかけ)」が必須です。

サービス業におけるインターナルブランディングとは、自社がどのような理念やビジョンを持ち、どのような価値あるサービスをお客さまに提供しようとしているのか、それらを明確にし、従業員に理解・共感してもらうことです。「自社らしさ」の共有のもと、誇りと自覚の醸成を図ります。

そのゴールイメージは、従業員一人ひとりが、自社のブランドのあるべき姿、日々変化するステークホルダーの要請や期待をしっかりと認識し、『一人ひとりが自社ブランド』 として、ブランドを体現していくという意識を持って業務に携わることです。これにより、従業員に仕事に対する誇りが育まれ、その誇りがサービス品質の向上につながります。インターナルブランディングは、サービス業の成長エンジンとなります。

快適な空の旅は、地上から始まる

番組主人公の空港グランドスタッフは、こうつぶやきました。
「何事もなく、気持ちよく乗っていただけることが本当に重要」
「何もないから、すばらしい」
「おもてなしもなければいけない」

……快適な空の旅は、離陸する前から始まっています。

【細田悦弘 プロフィール】

中央大学大学院 戦略経営研究科フェロー、一般社団法人日本能率協会 主任講師
企業や大学での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。
CSR・ブランディング・コミュニケーション分野において豊富な経験を持ち、 理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。
※本文著作権は細田悦弘氏に所属します。

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