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CSRを次のレベルに高めるために

SDGs

次のようなことを想像してみよう。
あなたの会社が社会的責任を何も果たしていない。社員があなたのビジネスにエンゲージしていない。ライバル企業との差が分からない。マーケティングプログラムが効果を発揮しない。共有価値コミュニティが何も価値を生まない。これらのことが、朝起きた時に頭をよぎるのだ。悪夢より悪いシナリオではなかろうか。そんな状況は避けたいものだ。

社会的責任を果たすためにできるベストな方法とは、実行あるのみである。私たちはあらゆる社会的責任を伴う活動を実施してきた。そのためには人的資源と多くの予算を必要としたが、インダストリー全体からコンサルタント、協議、ブログなどのサポートを得ることができた。

だが私たちは多くのことを行ってきた中で、なぜ行っているかの理由が分からなくなっていたようだ。私たちはCSRのメカニズムの罠に陥っていた。私たちは立派なビルダーだったが、何を建てているのか理解していなかったのだ。あらゆる私企業が「社会的責任」について言及するが、私たちはそれらの企業と何も変わらなかったのだ。

CSRを次のレベルに高めるということは、自信を持って社会的な目的を主張していくことだろう。たとえそれが、伝統的なビジネスの考え方と違っていても。PatagoniaはeBayとパートナーシップを結び、Patagoniaの古着を販売する人たちのために、オンラインクリーニングハウスを設立した。これを利用するためには、顧客はCommon Threadsに参加しなければならない。Common Threads には削減、再利用、持っているものを使う、不要なものは売る、中古を買うという5つの環境改善目標を掲げている。この活動が本物であることは、Patagoniaの販売を圧迫することを敢えて行っているところからもわかるだろう。

CSRを次のレベルに高めるということは、利益など簡単に判断できる結果ではなく質にフォーカスすることである。コミュニティへの投資の価値は、どれだけの投資を回収できたとういことからは判断できない。コミュニティ組織とコラボレーションが効果的に働き、どれだけ社会をより良いものに変えられたかが重要なのだ。

CSRにはまだまだ可能性が隠されている。ただこれまでに築き上げられてきたCSRの常識を超えたところに、CSRの本当の価値があるのだ。

なぜCSRプログラムの予算をより多く獲得する必要があるのか

来期のCSRプログラムに、どれだけの予算を割り当てるのかを決める時期がきた。残念ながら、多くの企業では十分な予算が当てられていないのが現状だ。

企業の慈善事業への投資は、ビジネスの世界で競争力を保つために必要な活動である。特に社員が中心に行うボランティアやチャリティ活動については。しかしそのような慈善事業が与える社会的、または経営にもたらす効果について十分認識されていないようだ。社員のボランティア活動に理解を示さない経営者は、慈善事業がもたらすビジネスへの直接的な効果に気付いていないのだ。CSRプログラムが社員の会社に対する愛着心を育て、スキルアップやリーダーシップを発揮するためのトレーニングにつながることを知って欲しい。

ひとつの記事で、CSRプログラムがビジネスにもたらす効果すべてを説明するのは難しい。まず手始めに、社員のボランティア活動が会社に対する社員のエンゲージメントを高める理由を説明する。これは特にミレニアム世代に顕著に表れる傾向である。2014年に行われたミレニアム世代への調査によると、5年以上同じ会社で働いている理由として、仕事と同僚に対して強いつながりを感じているから、というものがある。同時に、彼らの属する会社のミッションや目的に賛同しているのだ。このレポートからは、ミレニアム世代がボランティア活動を通じ、同僚たちと仕事に対する情熱を共有したいと感じていることがわかる。ボランティア活動としては、職場の近隣コミュニティをサポートする活動が理想的である。なぜならミレニアム世代は、ビジネスのミッションとコミュニティへの見返りが同居することを望んでいるのだから。

ミレニアム世代が仕事に愛着を持ち続ける理由と、彼らがその会社で働くことを選んだ理由は同じである。そのような情熱的なミレニアム世代が就職活動で最重要視するのは、どのような「企業文化」を持つ会社であるかである。企業文化にはビジネスが社会に与える影響、仕事環境、多様性への配慮、ヒューマン・リソースの基準などがある。ある調査によると、ミレニアム世代を引き付けるためにCSR戦略を展開している企業は、優秀なミレニアム世代の人材確保に成功しているという。

次にCSRプログラムがもたらす社員のスキルアップについて見ていこう。企業が社員教育に熱心であることは、社員たちの未来に投資をしているというメッセージを伝えることになる。企業は見返りとして、より高いパフォーマンスを得られることを期待している。社員教育には直接的に仕事に関わるもの以外にも、チームワーク、リーダーシップ、問題解決のためのパブリック・スピーキングなどがある。そのようなあらゆる面における社員教育を行うには、莫大な予算がかかる。ある調査では社員1人の社員教育に、年1200ドルの費用が必要だとされる。

そこで注目して欲しいのが、CSRプログラムがもたらす社員教育への効果である。ボランティア活動で必要となるのが、チームをまとめるスキルや、会社の仕事で培った専門知識を応用するスキルである。社員1人がボランティア活動に参加するために必要な予算は、年間416ドルとされる。前述の社員教育プログラムより大きく下回る。

ボランティア活動の実践を通じ、低予算でスキルアップの効果が見込まれるのだ。さらに最初に述べたように、CSRプログラムは社員の会社に対する愛着心や信頼感を増す効果が期待される。経営者はもっとこの事実を認識し、より多くの予算をCSRプログラムのために割いて欲しい。

ライタープロフィール

神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長

創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。

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