日本企業のイノベーションに対する取り組みと達成の割合の驚くべき数値
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この考え方は、明確には意識されていなかったとしても、昔からある企業が成長するために欠かせない取り組みのひとつだ。企業にとっては、現在の売り上げのために既存の事業の成長と、未来の売り上げのための新事業創造の両輪が同時に必要とされていた。しかし、1990年代以降の日本企業は、既存事業の維持・拡大については、躍起になって進められたが、新規事業、つまりイノベーションについての取り組みは、十分に行われてこなかったと言わざるを得ない。 それを証明する如実なデータがある。
2012年に行われた日本企業335社を対象にした「日本企業のイノベーション実施調査」だ。これによると、日本企業の売上高のうちの「新規領域」(過去3年以内に市場に投入した新事業から生み出された売り上げ合計)の占める割合は、わずか6.6パーセントという数値だった。これは、類似調査におけるアメリカの11.9パーセント、中国の12.1パーセンと比較して、ほぼ半分の割合でしかない。
しかも、その数値をさらに詳しく見ていくと、「新規領域」のなかで、未だ存在しない市場に向けた全く新しい「革新領域」がどの程度の割合かというと、アメリカの企業は約半数の51.5パーセントだったのに対し、日本企業は11パーセントというアメリカの約5分の1でしかなかった。
これは、いかに日本企業が“イノベーション”という言葉からかけ離れているのかを示している。 ただ、日本の企業のなかにもアメリカと同程度の割合で「革新領域」で売リ上げている企業も存在する。それらの企業のほとんどが、業界平均を上回る持続的な成長を遂げていた。
イノベーションのためには、社会課題やニーズと密接に関係するCSVの考え方は、大きなヒントになる。まだまだ日本では浸透していないCSVについて考えることこそが、イノベーションを達成するための方法のひとつといえるだろう。 参照 『CSV時代のイノベーション戦略』ファーストプレス 著:藤井剛
イノベーションの起点として重要な役割を果たすNGO
そうなると、NGOが、今後の企業のイノベーション活動においてもとても重要な役割を果たすことになる。
有力なNGOは大企業や大国の政府すら動かすだけのパワーと知見を有している
特にアジア、アフリカの新興国での増加が顕著である。
有力なNGOはさまざまな面で影響力を発揮している。
例えば企業に変革を迫るNGOのグリーンピースは、IT企業のデータセンター電源のエネルギー消費を問題視し、Cool ITキャンペーンを世界的に展開した。
ここでは多大なデータセンター電源を使用している有力なIT企業を洗い出し、電源を100%再生可能エネルギーで賄うべきということを提案した。
この結果として、アップルやフェイスブック、イーペイなどのグローバルIT市場におけるリーダー格の企業が改善を宣言するに至った。
昨今ではタイ国同士の経済交渉の場、例えばEUとアメリカの自由貿易協定である環太平洋貿易投資パートナーシップにおいても、NGOの影響力が見られる。
有力なNGOは今やグローバル企業や政府をも動かせる力を持っているのだ。それは社会課題に対する幅広い知見とノウハウを有しているからである。
イノベーションを標榜するなら、世界経済の動向や競合への調査と同じレベルで有力NGOの動向を注視する必要がある
そのため今後のCSVにおけるイノベーションに本格的に取り組む日本企業においては、世界のマクロ経済動向や競合他社の動向などを調査・分析しているのと同じレベルで世界の社会課題やそれらの解決を生業とする主要なNGOの動向を調査・分析しておくことが効果的だ。
各テーマにおける有力なNGOの動きを知り、彼らとのリレーションシップを戦略的に構築していくことが今後必須になってくるだろう。
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